行き詰まった日本のアパレル。原因から考える非日常服の可能性

 

3.デザイナーズブランドを目指そう

ユニクロを目指すのが無理なら、デザイナーズブランドを目指すのはどうだろうか。ブランドイメージを高め、商品の価格を上げるのだ。いかに安く作って安く売るか、ではなく、いかに高く売るか。そのために、どれだけ投資できるかが問われる。

デザイナーズブランドも、ある程度のリードタイムは必要だ。世界は年間2シーズンで回っている。テキスタイルもアパレルも年間2回のコレクションを作成しなければならない。しかも、コレクションを作るデザイナーは、自分でテーマを決めることが必要だ。トレンド分析や昨年実績を元に、商品企画を組み立てるという手法そのものを変革しなければならない。

役割分担や責任も異なってくる。デザイナーは、売れなければ契約解除となる。その代わり、商品化の責任を負う。営業はコレクションの前にブリーフィングを行って、希望を伝えるが、その希望を聞くかどうかはデザイナーが決める。

デザイナーという職業はハイリスクハイリターンである。報酬も高いが、責任も重い。日本では、売れなくても、デザイナーが解雇されることはない。その代わり、デザイナーに商品化の権限を与えない。給料も低い。誰も責任を取らない体制の中で、会議を重ね、商品化していく。こうしたやり方を根底から覆さない限り、デザイナーズブランドを展開することはできない

4.オートクチュールとトレンド

ユニクロにもなれない。デザイナーズブランドもできない。そんな会社が多いだろう。時代の変化と共に、産業も企業も世代交代が進むものだ。従って、時代の変化に対応できなければ淘汰されるだけだ。しかし、ファッションが好きで、ファッションを目指す若者のために、一度、今の状況を離れて、根底から考え直してみたい。

最初に、オートクチュールについて考えよう。オートクチュールとは、高級注文服と訳されるが、一人一人の顧客のボディや頭型を作り、それに合わせて服を作る。以前、シルクドソレイユの衣装作りをテレビで観たが、出演者全員の頭部の型を取り、仮面やマスクを作っていた。この手法をデジタル化すれば、完全オーダーのパターンを作り、一枚流しの縫製で製品ができるかもしれない。しかし、ZOZOスーツ以上の精度が求められるだろう。

オートクチュールの起源は、貴族のお抱え仕立て師による夜会服である。日常の服ではないので、常に斬新さが求められる。パーティーで、いかに目立たせるか。但し、単に派手なら良いわけではない。周囲との差別化やコンセプトやテーマの深さや知性が問われたに違いない。

その歴史がパリコレに伝わっている。デザイナーがテーマを競い合うのは、それが時代を的確に表現していることが評価されるからだ。その価値がブランドライセンスビジネスに生きている。

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