国際交渉人が懸念。アジアを混乱に陥れるトランプ外交の袋小路

 

次に北朝鮮問題を含む朝鮮半島情勢です。昨年6月12日のシンガポールでの第1回米朝首脳会談では、大きな成果こそなかったものの、アメリカの現職大統領と北朝鮮の国家元首が初めて顔合わせをするという歴史的な内容であったため、およそ70年にわたる対立と緊張関係にピリオドが打たれ、北東アジアに新しいパワーバランスが生まれるのではないかとの期待が持ち上がりましたが、以降、見事に北朝鮮外交の術にはまったのかどうかは別として、全く解決に糸口は見えてきませんし、10月5日にストックホルムで開催された米朝の実務者協議も物別れに終わっています。これまで、ディールメイキングのために、北朝鮮が短距離弾道ミサイルやSLBMなどの実験を行っても、「金総書記とは非常にいい関係にある」と、まるで自らに言い聞かせるかのように、不問に付してきましたが、ついにそれも終わりを迎えそうな気配です。

10月5日の実務者協議が物別れに終わり、また北朝鮮側からの一方的なアメリカ批判を受け、トランプ大統領と安全保障チームは、一旦は棚上げにした北朝鮮攻撃プランを再度テーブルに乗せた模様です。その表れは、F/A18戦闘機(スーパーホーネット)を中心とした具体的な攻撃プランの検討と、B2戦略爆撃機のシステムの更新です。

以前、オプションとして検討された際には、韓国をまだ同盟国・パートナーとして見ていましたが、今回は韓国との協力は視野に入れず、あくまでも日本の自衛隊との協力のみを想定し、実質的には米軍のみの作戦遂行を計画している模様です。そして『北朝鮮がICBMを発射した瞬間、北朝鮮を焦土化する』との方向性も、そこには含まれているようです。

その表れが、地下施設を確実に核兵器により攻撃が可能なB1-B爆撃機を派遣するリストに入れたことでしょう。核弾頭を搭載したICBMを北朝鮮が発射するようなことがあれば、このB1-Bが北朝鮮の地下施設をことごとく破壊し、地上の殲滅はスーパーホーネットとB2爆撃機で対応するということでしょう。恐怖のシナリオです。

これは何を指すか。大韓民国の出方次第では、韓国も含めた朝鮮半島全体を巻き込む攻撃になる可能性です。以前から何度も触れていますが、在韓米軍の撤退が検討され、時期も早められているとの情報に加え、ことごとく戦略的な兵器とシステムが日本に移動していることから、米政権内の安全保障チームでは、ほぼ韓国切りが完了していることが推測できます。

仮に攻撃に踏み切る場合、決定的な兵力を用いた迅速かつ本格的な攻撃になるかと思いますが、その実施に当たり、事態の不必要な拡大と長期化を防ぐため、中国とロシアに対して事前に断りを入れておく必要があります。両国とは、ニュース上では緊張関係にありますが、本件に関しては、今週に入って、米中ロの安全保障関係者が会ったらしいとの情報から、何かしら詰めの最終段階にきているのではないかと勘繰りたくなります。10月5日の米朝実務者協議後、アメリカ側は『2週間後の再会』に言及していましたが、もしかしたらこの『2週間』が朝鮮半島の命運を決める最後のチャンスになるのかもしれません。

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