現役医師が明かす、オピオイド中毒を拡げた企業そして医師たち

 

不完全な利益相反の開示

NASEM内の全米医学アカデミー総裁のビクトル・ザウ医師(循環器内科医)がメドトロニック社と金銭的つながりがあることも明らかになりました。一億円相当のメドトロニック社株を保有していたのです。この会社はもともとデバイス専門であり、オピオイド注入デバイスも製造販売していました。

もちろん、企業との共同研究は自由に行うことができます。産学共同研究は科学的イノベーションを起こす仕組みでもあります。問題なのは、そのことをオピオイド関連の論文発表時に掲載していなかったことでした。しかも、医療政策を動かすことができる地位の人だから問題なのです。

これは、医学ガイドライン作成者での利益相反の開示義務に引っかかるのです。この種の義務違反は欧米では厳しく追求されます。2018年には、世界最古で最大級のがんセンターであるニューヨーク市のメモリアルスローンケタリング癌センターの院長が、企業との共同研究活動を報告していなかったことから辞任したくらいです。日本でも、インフルエンザの薬のオセルタミビルに関する使用に関するガイドライン作成メンバーにこの薬を製造する会社から巨額の研究費を受け取った医師たちがいました。ガイドライン作成には、利益相反の排除が大切なのです。

文献:
Walt Bogdanich. McKinsey Advised Johnson & Johnson on Increasing Opioid Sales.The New York Times. July 25, 2019.
Tim Schwab. US opioid prescribing: the federal government advisers with recent ties to big pharma. BMJ 2019;366:l5167

image by: Shutterstock.com

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