現役医師が明かす、オピオイド中毒を拡げた企業そして医師たち

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1999年以降にアメリカ全土で40万人にも及ぶ死者を出したと言われる医療用麻薬のオピオイド中毒死問題は、8月末に米製薬会社のジョンソン・エンド・ジョンソンに巨額の賠償命令が下されるなど、複数の製薬会社が責任を問われています。なぜこのような事態が起きたのか、メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で沖縄在住現役医師の徳田先生が解説。医療関係者が犯してはならない利益相反行為が、実は日本にもあると警鐘を鳴らしています。

オピオイド中毒死に関与した大富豪、企業、そして専門家

現代のメディチ家と呼ばれている、世界有数の大富豪、サックラー家(Sackler family)が今、社会から厳しく批判されています。世界中の博物館や大学は、サックラー家からの寄付の受け取りをも拒否する事態となっています。また、訴訟での高額賠償を命ぜられており、大富豪としての地位から転落していく症候を示しています。

その理由は、大量のオピオイド中毒死の責任です。サックラー家はオキシコンチン(一般名オキシコドン)を製造したパーデュー・ファーマ社のオーナーファミリー。慢性疼痛患者に対して医療用麻薬であるオキシコンチンが投与され、麻薬依存症になり、非合法の合成フェンタニルやヘロインの依存症が全米に広がり、年間5万人もの人々が死亡している世界医療界最大の有害事象です。オキシコンチンの拡販がそもそもの原因です。

また、サックラー家の3兄弟は全員医師免許所持者です。パーデュー・ファーマ社は長年、オキシコンチンの依存症リスクについて、アメリカの医師たちに意図的に過小に報告してきました。例えば、バイタルサインに痛みスケールを入れるべき、とする広告です。バイタルサインとは、病院に受診するときに患者さんがチェックを受ける、血圧、脈拍数、呼吸数、体温などの生命徴候です。これに痛みスケールを入れ、常に痛みを測定し、痛みは必ず治療すべき、として医師たちに麻薬性鎮痛薬を処方させるよう促していたのです。

マッキンゼー、そして全米医学アカデミーの関与

三人の医師も含む大富豪家の非倫理性も問われたこのオピオイド中毒大量死の原因追求は、さらに新たな展開を見せています。それは、世界的なコンサルティング会社のマッキンゼー社が関与していたことが判明したからです。オクラホマ州での裁判資料によると、マッキンゼー社はジョンソン&ジョンソン社に対して、オピオイドの販促活動をアドバイスしていました。処方を増加させるべく、医師のターゲットリストを作成し、メールオーダーを利用していたのです。

アメリカには、全米科学エンジニアリング医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering and Medicine:NASEM)という専門家団体があります。もともとリンカーン大統領が設置した歴史ある科学者団体です。現在、オピオイドに関する国家的政策を指導する立場でもある組織です。しかし、この組織がサックラー家から少なくとも15億円、最大で25億円もの寄付を受け取っていたことも判明しました。

ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)誌によると、NASEMのオピオイド関連パネルの15人の専門家のうち、少なくとも7人のメンバーがオピオイド関連企業と金銭的つながりがありました。医学診療ガイドライン作成を指導する専門家たちです。中には、パーデュー・ファーマ社から合計500万円以上も研究費を受け取っていたパネリストメンバーもいました。

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