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生涯学習の場で学びの「面白さ」を伝えやすい「外国語」の効果

さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんが、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて伝えてくれる、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』。今回は、12月5日、6日に秋田で開催される「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」で模擬授業を行う引地さんが、その準備の中で改めて気づく「学び」につながる大切な感覚について。特別支援学校の生徒さんが目を輝かせた引地さんの「仕掛け」とともに紹介しています。

学習を「面白く」するために、外国語への衝撃をもう一度

文部科学省事業で全国6ブロックに分かれ行われる「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」は12月1日開催の東海北陸ブロック(名古屋市)を皮切りに2月まで各ブロックで行われる。

東北ブロックでは秋田県教育員会が主催となり12月5-6日開催予定で、私はこの中で、秋田大学附属特別支援学校の生徒10人に対する模擬授業を行うことになっている。

よくよく考えてみると、初対面の生徒向けにいきなり授業を行い、それが来場者の有益な参考になるほどの自信もなく、先日「せめて生徒と交流して当日の緊張感を和らげたい」と秋田に出向き、生徒たちと自己紹介をしあい、自己紹介にちょっとした工夫をしたところ生徒たちは新鮮な驚きの表情を見せた。それは外国語への衝撃とでもいうのだろうか、何気ない私の言動の反応が面白かった。

生徒と対面した私は、名前は名簿で受け取っていたものの「漢字の読み方も正確に知りたいので、教えてください」と話し、ホワイトボードを前にし「正確に覚えるためにここに書いていきます」と言い、「だた、ひらがなか英語かハングルのどれか1つで書きますから、言語を選択してください」と話した。

それは、ホワイトボードをいくつかの言語で表現することで、「学び」の雰囲気がつくられる、との考えからの演出であったが、これが結構効果的だったようだ。

名前を聞き、言語を選んでもらい、ホワイトボードに自分の名前が英語か日本語かハングルで記される、いや「描かれる」。それを、見たままノートに写そうとする生徒がいる。見学していた先生曰く、「普段とは違った驚きの表情を見せていた」というから、予想以上に大きな効果があったようだ。

文科省が政策として推進し秋田県教委が行うコンファレンスは障がい者向けの生涯学習の実現が目的だから、この授業では特別支援学校の高等部の段階から「学び」の楽しさを知ってもらい、その後の「学び」への意欲を高め、同時に教育委員会はじめとする教育行政がその地域での障がい者への生涯学習の場を提供していくという方向性の中にある。

だから、まずは学びが「楽しい」「面白い」ものだと思ってもらうのがポイント。この「外国語との出会い」は、高校時代に英語以外の言語と出会ったり、大学に入学して第二外国語が必修になったりの未知との遭遇に「面白い」と思った自分の過去の感覚を参考に考えたもので、異文化に触れることは、何か新しい自分のどこかを刺激することにもある。

心の化学反応が次の行動につなげる、学ぼうという意識に向かうわかりやすい感覚は「面白い」なのだと思う。

そんなことを考え教壇に立つ自分は「面白い」の感覚を伝えなければいけない使命を担う。義務教育や大学入試に向けた勉強ではどうしても評価や成績がついてまわるから、面白くなくなってしまう。その記憶のままの勉強では、そのイメージは悪いままになってしまいがち。生涯学習とは、面白いと思えることを学ぶことであり、それは生涯、障がいの有無にかかわらず、求める権利を有するのである。

私が障がい者の学びをこの数年、開拓してきた中で、大事なのは「面白い」という感覚。それが学びにつながるのだということを多くの人が当たり前に認識し、場合によっては障がいのある人にも、その道筋を示していける環境を作りたい。

秋田県での模擬授業はどうなることか。入場無料です。お近くの方は是非足をお運びください。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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