安倍晋三首相が20日、国会で行なった「施政方針演説」で、「地方創生の好事例」として紹介していたあるエピソードに疑問の声があがっていると共同通信、TBSニュースなどが報じた。安倍首相が「若者の移住推進策」の中で紹介した、パクチー栽培に取り組むために島根県江津市(ごうつし)へ移住した男性が、昨年末に県外に転居していたことが判明したという。
「地方創生で島根移住」のはずが - 首相演説で紹介の男性、既に転出https://t.co/JsCIM3ITbF
— 共同通信公式 (@kyodo_official) January 21, 2020
「成功例」の男性、すでに転居
安倍首相は同演説で、「若者の起業を積極的に促した結果、一昨年、転入が転出を上回り、人口の社会増が実現しました」と述べ、島根県江津市が進めてきた若者の「起業支援」について触れた。パクチー栽培に取り組むために関東地方から移住してきた男性のために、市が農地を借りる交渉をし、地方創生交付金の活用で資金の支援をした。安倍首相は「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が移住の決め手となった」と、男性の言葉も引用していた。しかし、市への取材から、男性は昨年末に関東地方に戻っていたことがわかったという。
菅官房長官「問題ない」
人口が増えた成功例としてすでに転居している男性を取り上げた件について、菅官房長官は「3年以上にわたって移住している」とし、「市の起業支援による成功例として紹介するのは問題ない」とした。また、男性が現在も江津市に住んでいるかは「個人情報」を理由に明らかにしなかったという。しかし、安倍首相は施政方針演説で男性の実名を出している。
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