『シベリアの力』開通。中国とロシア接近が物語る新しい世界地図

 

1つ目は、アメリカに対峙するための対抗軸という位置付けです。中国の習近平国家主席も、ロシアのプーチン大統領も、トランプ政権の誕生当初は、トランプ大統領から持ち上げられて、米ロ・米中は友好的な関係になるのではないかと“妄想”が語られましたが、ご存じの通り、両国とも真っ向からアメリカとは対立関係にあります。

ロシアについては、トランプ大統領が誕生した選挙への介入疑惑に対する反動から、トランプ大統領が“あえて”ロシアへの対立軸を形成することで、再度対立構造ができました。そこに、米ロ間の中距離戦略核弾道ミサイルの停止の取り決めを、トランプ政権が一方的に破棄したことで(実際には“他の目的”が両国間にあるようですが)、関係は冷え切っています。

中国については、ご存じ米中貿易戦争の、アメリカ側からの発動により、今や2年以上にわたる対立に発展し、どちらも超大国としてのプライドから退くことはせず、その悪影響は両国内のみならず、相互依存関係にある世界経済の性格ゆえに、世界経済全体に及んでいます。

2018年までは、両国とも、それぞれにアメリカからの圧力や非難に対する抵抗を行い、中ロ間はそれぞれの覇権と影響力の拡大競争に勤しんでいましたが、その図式は、2019年に入って一転し、ここにきて、世界各地でアメリカが代表する自由貿易・民主主義陣営と、中ロが率いる国家資本主義陣営の対立という構図に様変わりしました。

先週スタートした『シベリアの力』は、エネルギー安全保障面での中ロの接近として描かれますが、同時にロシアの外貨獲得手段を作り、中国にとってはエネルギー安全保障におけるエネルギー源の多様化に寄与しています。

両国がエネルギー、天然ガスパイプラインを通じた結びつきを強めたことで、シベリアからウラル山脈までに至る中央アジアエリアについては、完全に資本主義陣営の締め出しに成功するという結果になり、確実に巨大な国家資本主義の陣営がここに成立します。

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