『シベリアの力』開通。中国とロシア接近が物語る新しい世界地図

 

2つ目は、アメリカ・トランプ政権の“失政”による中ロの域外への影響力拡大です。その顕著な例は、中東・アフリカ地域に伸びる中ロの影響力です。

中国は、豊富な資金力と安くて質のいい技術を以て、一帯一路政策という戦略の下、アジア各国はもちろん、アフリカ大陸各国に対しても、『気前のいい貸付』という武器を用いて、東南アジア諸国、中央アジア諸国、中東、アフリカ諸国を国家資本主義の陣営に組み込もうとしています。

欧米諸国はこれを『債務の罠(debt trap)』と非難していますが、被援助国からは、中国による“のっとり”への懸念は抱きつつ、欧米諸国や世界銀行などの国際援助機関とは違い、制度的な構造改革を援助条件に課すといったことはせず、あくまでもBusiness is businessという態度で非干渉主義を貫く支援をし、パートナーシップを結ぶ形式を取ることで支持を拡大しています。

アフリカ各国からは、「別に中国が好きなわけではないが、欧米諸国のように内政にいちいち口出ししないのでマシ」との声もあるほどです。

ロシアについては、これまでに何度もお話ししてきましたが、中東アフリカ地域への進出は、ソビエト連邦の崩壊と解体もあり、欧米諸国に比べて出遅れていましたが、シリアの内戦や米・イランの反目、アメリカとトルコとの争いなどで生まれた緊張と不安定な状況に付け入り、アメリカが敵視するイランやトルコ、そしてシリアのリーダーシップに近づき、アメリカへの対抗力を提供することで、出遅れを一気に取り戻そうとしており、これまでのところ、予想以上にうまく行っているものと思われます。

そして、今、中ロがこの地域でも手を結ぶ動きが出ており、これまでアメリカにべったりだったサウジアラビアやアラブ首長国連邦もロシアへの急接近をしていますし、アフリカ諸国も、欧米諸国への対抗力としての後ろ盾として、中ロを迎い入れているようです。

これまで長く世界のすべての大陸に軍港を持ち、どの海にでもアクセスで来たのはアメリカ1国だけでしたが、中ロが手を結ぶことで、その対抗軸として、同じく世界中でアメリカと対峙する体制ができようとしています。結果、国家資本主義の陣営の広がりが、まるで赤い波に例えられるように、顕在化しています。

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