配慮?フレンドリー?NY日本人社長が感じた日本人の奇妙な距離感

 

日本人カップルの行動に唖然

ホテルの隣のブロックには有名なカラオケチェーンのお店があり、そこからの帰り道なのだと思ったのは、いい気持ちになっている彼女の方が鼻歌を歌っていたからです。深夜2時を回っていることもあり、おそらく自分たち以外は誰もいないと思ったのか、彼女の鼻歌はもはや鼻歌レベルではなく、従来のカラオケレベルの音量で響いていました。

(あれ?米津玄師の『Lemon』じゃん)自分の十八番ということもあり、僕もその彼女の鼻歌に合わせて歌ってエレベーターの開くのボタンを押したまま、二人が入ってくるのを待ちました。 完全に合唱状態で。

二人にしてみれば、エレベーターに入ろうとすると自分の鼻歌に合わせて知らないおっさんが歌っているので、さすがに驚きます。彼氏の方は少し驚く顔をするも、二人とも酔っ払い。大笑いしながらそのまま歌ったままエレベーターに入ります。まったく見ず知らずの女の子と、狭い箱の中でセッション(笑)
 雨が、降り止むまではぁ、帰ーれなーい♪
知らない今会った人と見つめ合ったまま。
 切り分けた、果実の片、方の、よおにいぃ~♪
エレベーターは上がっていき、彼氏は爆笑したまま。
 いまでも、あ、な、たは、アタシの光ぃいぃ~。 。 。

目を見つめ合い、歌が終わると同時に、「光ぃぃぃい、、、誰!!??」と僕がその女性を指さすと、カップル二人はそこでまた大爆笑。次の瞬間、エレベーターの扉は開き、僕は「おやすみ」と笑顔で出ていきました。

日本にもニューヨーカーっぽい、素敵なアホはいるんだな、といい気持ちで部屋に戻ろうとしたところ、まだ上の階に行くべき、さっきのカップルがエレベーターから出てきて僕に追いつき、「めっちゃウケるぅーーー!え?え?お兄さんもカラオケ帰りですか?そこのまねき猫(店名)?え、米津、好きなんすか!?めっちゃ楽しい!どーのこーのどーのこーの…」と立て続けに喋ってきました。

一気に興ざめ。これ、まるごと、いらなくない?せっかく、見ず知らずの人とエレベーターの中で本気で歌って、終わった時点で「誰!?」って爆笑取って、次の瞬間完璧なタイミングでエレベーターが開いて、「おやすみ」と笑顔で別れた。名前も知らない人間同士が、流行の曲でセッションして笑い合えた。どうして、追いかけてくるかな…せっかくの完璧なエピソードが台無しだ。

実際、最初に顔を合わせた時は驚いた表情をしていたはず。 見ず知らずの人とは距離を空ける民族なんじゃないの?そこから一回、何かを一緒にしたら、そこからグイグイ入ってきちゃうの?
うんざり。

せっかくの完璧な夜が一気に台無しになったと、その後、国際電話で妻に話すと「一体、どこに向かってるの?一体、何屋さんになりたいの?」と逆に呆れられました。「恥ずかしいことしないでよ」とも言われました。

少年の頃の夢がかなった書籍出版

翌々日あたりから、実際に全国の書店に著書が並び始めました。というのは、SNSで多くの、本当に多くの方から写真付きで書店に並んでいる状態をアップしてもらったのですが、当の本人は忙しすぎてまだ書店に行けていない。そんな日が4~5日続きました。

最初に行ったのは、お客さんとの打ち合わせが終わった新宿。紀伊国屋でした。横積みに自分の本が並んでいます。全国ネットのテレビやラジオに出演した時も、講演会で300人集客した時も、コラムがネット上でバズって14万人が読んでくれた時も、そう感動しなかったけど、さすがに今回はその場から少しの間動けませんでした。この時は、売れても売れなくてもゴールだなと思いました。書籍出版はそれくらい、幼少の頃からの夢でもありました。

かなりの時間、その場にいたのだと思います。一人りの同世代か少し下のビジネスマン風の男性が手にとってパラパラとめくっている現場に遭遇しました。 彼は、そのまま手に持ってレジまで持って行ってくれました。めちゃくちゃ話しかけたかったけど、なんとか必死で自分を抑えました。見ず知らずの男性を人生で初めて、その場で抱きしめたくなりました。僕の本と一緒にレジに持っていった、チラッと見えたもう一つの書籍の著者である、脳科学者?の中野信子さん?を勝手にライバル視しました。100倍以上の差の売上累計だろうけれど。

発売前の先行予約の段階でAmazonビジネス部門 第1位になったことにより、出版社が日本経済新聞に大きめの広告を出してくれました。

その日、大手町の地下鉄車内で日経新聞を広げている年配のサラリーマンに遭遇します。どうしても気になる(笑)どのページを見ているか凝視する。おじさんが今、読んでいるその次のページに自分の顔写真が出ている広告が掲載されていると知っている僕は、なぜか勝手にドキドキしてしまう。いよいよページをめくりました。おじさんをじっと凝視してしまう。凝視されていることに気づいたおじさんは不審人物を見るような目で僕を見返してきます。

広告までじっくり見ることもないのか、すぐに次のページをめくっていました。僕は、地下鉄車内で頭のハゲたおじさんをドキドキしながら見つめる、完全に危ない人間でしかありませんでした。

image by:Shutterstock

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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