今後注目される東京大学の「発達障がい者支援」に対する取り組み

 

今後の展望は?

PHEDでは、社会的要請の多いテーマの知識・経験の集約を構造化するためにテーマ別検討部会「Special Interest Group(SIG)」として、「アクセシビリティ保障」「支援技術活動」「キャンパス・ソーシャルワーク」「根拠資料と判断ガイドライン」「防災・災害時等緊急対策」「キャリア・就労移行支援」「法的根拠の理解・遵守」「実習および専門職養成課程での配慮」の8つに分けて、それぞれ3~9人の構成メンバーで検討し2020年度の事業終了までに「クオリティーインディケーター」(QI)を作成する計画という。

QIは医療分野での指標として作成されるものであるが、東京大学では米国での高等教育機関で用いられている例に倣い、支援体制の構築に向けた資源の確保、啓発の推進、活動の方法を示すこととし、2019年度に示されている内容としては「選択肢や可能性についての情報提供は必要だが、本人の進路について過度な方向づけを行っていないかを常に振り返る必要がある。障がい者向けとされる画一的な就労支援に陥ってはならない」等が上げられている。

東京大の取組みはインクルーシブ教育の保障を切り口にして、学内のコミュニケーション環境を整え、問題を抽出し課題化した上で解決を目指していくプラットフォーム形成というプロセスで行われている。上からの目線で物事を考える、決める、のではなく、ボトムアップに問題を抽出しながら水平型に議論し展開する雰囲気があるから、誰でも入りやすそう。

ただ、これは多くのプロジェクトがそうであるように、「最初だけ」の水平型になる可能性もある。組織の多くがヒエラルキーを作りたがるのだ。運用も同じようにインクルーシブな状態を「当たり前」にするために、どのようなコミュニケーション行為をしていくのか、東京大のQI作成と作成に至るプロセスを今後も注目したい。

image by: Shutterstock

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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