「幻覚も見えます」八尾市いじめ暴行事件、少女からの深刻な手紙

 

報告書について

2019年年末に私は被害側から年内に調査を終え、1月初めには被害側などへの報告と報告公開などの調整が行われると聞いていた。

再調査委員会は2019年7月に立ち上がり、わずか約半年で調査を終えることになる。第三者委員会としてはかなり早いペースでの調査であり、何らかの見落としはないか私は心配していた。

さらに、報告は1月20日に行われ、21日は記者会見が用意されるわけだ。わずか1日で、報告内容などを検討し、何らかの意見を一般人である被害側は求められる。

これは大変なことで、できれば検討する間を持ってもらえないかと打診をしたが、一切聞き入れられることはなかった。

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被害側は、学校、教育委員会、1度目の第三者委員会、警察や児童相談所というように、あらゆる機関から裏切られてきた。そうしたことからも、再調査委員会がどのような結果を出すか不明瞭である以上、あらゆる結果を踏まえ、今後のことを考えなければならなかったのだ。

さて、報告書では、21日の報道のように、いくつかの注目すべきポイントがある。

1.加害児童は、2月14日暴行事件以前から、被害女児に対して、「メスゴリラ」「ババァ」「デブ」「アホ」「バカ」「死ね」「うざい」「きもい」「二重あご」などと暴言を吐いたり、複数の男子児童と共に、押さえつけ髪の毛を束で抜き取ったり、追いかけて暴力をふるっていた。

これについては、やっと再調査委員会はいじめとして認定した。

そんなの当然だろうと誰もが思うだろう。

しかし、多くの学校や教育委員会では、こうした行為に被害者がわずかでも抵抗すれば、喧嘩扱いとなり、「いじめ」ではなく「児童間のいざこざ」で片付けられる。

加害者の親がモンペ(モンスターペアレント)であれば、その抵抗をいじめだと主張し、被害側もいじめ加害者だとされることもあるのだ。

2.2月14日いじめ暴行事件については、ほぼ一方的に被害女児がぐったりし、指の付け根を骨折するまで踏みつけられたという行為上は傷害事件の態様と変わらぬものをいじめと認定した。

これは、所轄警察が加害児童らの訴えを聞き入れ、喧嘩で処理をしていることからも、恐怖やその場から逃げるためにしたわずかな抵抗もすれば、加害行為の1つとみなされるのかという問題が生じていた。

報告書では、20回程度踏んだことが認められ、その様子と従前のいじめ行為から、わずかな抵抗は当然の抵抗であると認められたのだ。

これについても、一般感覚があれば、当然認められるし、いじめ行為を越えてむしろ犯罪行為なのだと思うだろうが、前述の通り、被害女児も加害者扱いを受けた事実があり、記録にも残っている。

こうしたことは滅多に起こり得ないが、滅多に誤りを認めない省庁や行政機関という壁をさほど権限を有しない委員会が独自に判断をできるか、忖度しないかなどに注目していた。

また、加害児童はこの暴力を兄に咎められ、左目に青痣ができ、左頬に引っ掻き傷を負ったことも認めた。

3.4年次のベテランと言われる担任教員についても書類廃棄やその指導の誤りが指摘された。この担任は、進級後に学校を去っているが、その時に保護者らに手紙を出している。そこには、このいじめ暴行事件などを暗にさして「誰も悪くない」「みんなに私は愛されていて嬉しい」という主旨を記していた。トンデモ教員なのである。

さらに、この担任が、いじめと判断すべき基準にいくつも一致する現象が起きていたのにも関わらず、被害児童に「我慢」を求め、上司には「いじめではない」と食ってかかったことも問題として取り上げている。

また、被害女児から相談を受けていたスクールカウンセラーが証言拒否をしたことも記載された。何らかの力学が働いたのか、スクールカウンセラーは立場が弱く、教育委員会や学校に逆らえるような存在ではないが、どこまで真実を闇に葬り、子供からの信頼を裏切り続けるのだろうか。

4.当時の学校長が、いじめとしての対応を怠ったことも報告書では認められた。私が行った調査では、学校関係者は2018年3月にスクールロイヤー(弁護士)に相談した際に、いじめの対応をするように勧められ、それ以降はいじめの対応をしたのだと聞いていたが、実はその後もいじめの対応はせず、5月の段階では「もめ事」と扱われ、6月にスクールソーシャルワーカーが会議において、いじめの重大事態にあたると指摘をするもスルー、校長自体は会議にも出席していないことも明らかとなった。

まるで他人事であり、校長権限の会議などでも、指導や対応を指示するような記録はないことから、この校長に教育を任せられるのかという疑問すら生じることになろう。尚、彼は、以前の『伝説の探偵』でも示したように、八尾市教育委員会の中で「いじめ問題」を担当する課の課長であった経歴がある。当然持っているだろうはずの知識、専門知識や技能を持っていると信頼や期待が寄せられる存在が、いじめを放置し、被害女児に二次被害をもたらしたことは、あまりに酷いとしか言いようがない。

5.教職員や教育委員会のいじめについての知識が乏しいことも指摘された。そして、こうした学校側の無対応と評価できる状態や教育委員会などの動きの鈍さなどが、いたずらに時間を消費し、被害女児を苦しめたことが指摘されている。

概ね私や被害側が問題視してきたことは認められた結果となった。

一般に、そんなの当たり前だろということが、いくつも確認をして、調査をしなければ認めらない世界が、こうしたいじめにまつわる世界なのだ。

そして、やはり前校長や当時の担任、教育委員会などの問題は、被害女児に二次被害を与え、その家族を深く苦しめた。この再調査委員会の結果が出るまで、およそ2年。この間、被害側に救いはあったのだろうかといえば、ほぼなかったと言えるのだ。

無支援のまま、被害家族だけが取り残されるような形となり、一部では加害者扱いを受けた。子供を救うために声を上げれば、モンスターペアレントだと誤ったレッテルを貼られることもあれば、校外のことを学校に押し付けるなと、匿名の問題関係者からネットで叩かれることもあったのだ。

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