死亡者が新型肺炎の27倍。それでも日本が報じぬ米インフル大流行

2020.02.06
 

今回のことで、あたしが何よりも不思議に思ったのは、どうしてインフルエンザに無頓着な人たちが新型コロナウイルスでは大騒ぎしているのか?…という点です。インフルエンザはあまり流行しない年と大流行する年があるため、年度ごとにデータが大きく変わりますが、2000年以降の日本国内の年間の平均値は、感染者が約1,000万人、死亡者が約1,000人です。

これほどの被害が出ているのに、日本人のインフルエンザの予防接種率は約50%、2人に1人は予防接種しておらず、生まれてから一度も接種したことがないという人も30%もいます。こういう人たちは、たぶん普段からマスクで予防するという習慣もないでしょうから、あたしのように買い置きもしていないでしょう。それなのに、新型コロナウイルスの大騒ぎが始まると右へ倣えでマスクを買いに走る。あたしには、まったく理解できません。

今、アメリカではインフルエンザが大流行していて、アメリカ疾病予防管理センターが1月18日付で発表したデータによると、感染者数は約1,500万人、入院患者数は約14万人、これまでの死亡者は少なくとも8,200人以上に上るとされています。もの凄い数字ですよね。でも、本番はこれからなのです。アメリカでのインフルエンザの死亡者は、毎年少なくとも1万2,000人を超えていて、大流行した2017~2018年のシーズンには、4,500万人が感染し6万1,000人が死亡しました。(※編集部註:上記の死亡者数は、WHO提唱の「超過死亡概念」に基づく値を参照)

アメリカの人口は約3億5,000万人ですから、2017~2018年のシーズンには7人に1人が感染したのです。感染者4,500万人のうち死亡者数は6万1,000人なので、致死率だけを見れば1%にも満たないですが、感染者全員が、この6万1,000人の中に入ってしまう可能性があったわけです。そして、アメリカ国立感染症研究所によると、今シーズンのインフルエンザの大流行を「過去10年間で最悪の状況」と見ており、2017~2018年の感染者数と死者数を超える恐れがあると推測しているのです。

流行し始めたばかりの現時点でも、アメリカのインフルエンザの感染者数は新型コロナウイルスの1,000倍、死亡者数は27倍です。アメリカではこれほど大変なことが起こっているのに、どうして日本のマスコミはほとんど報じないのでしょうか?中国や中国人の印象が悪くなるニュースは朝から晩まで垂れ流すのに、その1,000倍の規模で発生しているアメリカの問題には触れようともしない日本のマスメディア。これも安倍官邸への忖度なのでしょうか?

政府にしても、本当に日本人の健康や命を最重要だと考えているのなら、中国からの渡航者を規制するだけでなく、アメリカからの渡航者も体温検査など何らかの措置を行なうべきなのではないでしょうか?あたしは、この冬、日本でインフルエンザに罹った日本人の中には、アメリカ人がアメリカから持ち込んだアメリカ産のインフルエンザに感染した人も少なからずいるのではないかと思っています。

今回の新型コロナウイルスの問題は、数々の疑惑から国民の目をそらすために利用している首相も、その首相の対策の遅れを批判している野党も、「WHO(世界保健機関)の事務局長が中国の恩恵を受けているエチオピア人だから中国に忖度して緊急事態宣言を遅らせた」などとシタリ顔で述べているテレビのコメンテーターたちも、そんなバカバカしい番組を垂れ流しているテレビ各局も、ここぞとばかりに中国を批判し始めたネットの一部の人たちも、所詮はみんな「他人事」なのだと思います。そして、当事者不在のまま、私利私欲に満ちた大騒ぎが続いているのです。

image by: retirementbonus / Shutterstock.com

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