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新型肺炎の裏で進む北朝鮮消滅。米のシナリオに乗せられた金正恩

新型肺炎対策に追われるアジア各国ですが、その裏で密かに重大な案件が進行しているようです。北朝鮮を崩壊させるのは、コロナウイルスではなくアメリカなのでしょうか。「米国が北朝鮮によるICBM発射時の対応について準備を進めている」とするのは、元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さん。島田さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』でその内容を詳しく報じるとともに、大統領選イヤーに米朝戦争が勃発する可能性についても分析・考察しています。

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2020年、北朝鮮は消滅するのか?

非常に激しいタイトルに驚かれたかもしれません。世界を恐怖に陥れ、不安を掻き立てている新型コロナウイルスCOVID-19の蔓延のニュースは、もうすぐ死者が2万人に届きそうなアメリカでの新型インフルエンザの猛威を隠し、そして、北朝鮮という国家とその国民の生存に関わるような重大な事態を隠しています。

では今、北朝鮮をめぐってどのような事態が進行しているのか。

3度の米朝首脳会談を経て、世界は希望を抱いたかもしれませんが、実際には、北朝鮮の非核化についての具体的な策は何一つ決められず、またアメリカが主導する対北朝鮮制裁が解除される見込みも全くと言っていいほどありません。

時折、思い出したかのように“約束”された実務者協議が2国間で散発的に開催されてはいるものの、実態を見てみれば、アメリカも北朝鮮も、明らかに準備不足で、何も決めるつもりはない、何も譲歩する気がないことが分かります。

一応、両首脳とも国内向けアピールのために、美辞麗句を並べ、笑顔で固く握手して写真に納まっていますが、何も詳細をすり合わせない状態でのトップ会談ですので、実現可能性の高い内容は生まれていません。

しかし、このdeadlockにも思える状況が、トランプ大統領から北朝鮮に対して仕掛けられた一種の罠だったとしたら、皆さんはどう思われるでしょうか。

その可能性に気付きだした北朝鮮は、昨年、トランプ大統領にとっての本当のred lineはどのあたりかを探るために、大きな賭けに出ました。従来からの瀬戸際外交への回帰と、トランプ大統領を懐柔しようとする動きの繰り返しです。金正恩氏からの親書では、トランプ大統領を讃えていますが、ほぼ時を同じくして、ミサイル実験を続け、威嚇もエスカレートさせています。

短距離弾道ミサイルの発射実験、ICBMにも転用可能な固形燃料によるエンジン噴射実験、潜水艦から発射するSLBMの発射実験、そして、核実験の再開を匂わす様々な動き…、どこまでがトランプ氏の許容範囲かを探ろうとしています。その度、トランプ大統領の反応は「状況を見極めてみよう。しかし、金正恩氏が自らを破滅に追い込むことはしないと信じている」と、平静を装いつつ、しっかりと威嚇を行っています。

2019年はトランプ大統領にとっては、対北朝鮮我慢の年となりましたが、11月末に北朝鮮から出された一方的な要求、そして「クリスマスプレゼント」と題された脅しを受け、トランプ大統領は北朝鮮対策のギアを数段上げた様子です。

皆さん、2020年1月3日に何が起きたか覚えてらっしゃるでしょうか。アメリカによるイランの革命防衛隊ソレイマニ司令官の暗殺です。中東の魔の三角地帯と言われるイラン・イラク・シリアでは絶大な支持を集める彼を殺したことで、中東地域でのカオスがより酷くなったのは“直接的な影響”だとして、この暗殺にはもう一つのメッセージがありました。

それが、金正恩氏に向けた“クリスマスプレゼントへの返礼”です。「その気になればピンポイントで暗殺することができる」「一挙手一投足は常に見張られているぞ」というメッセージです。

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ソレイマニ司令官暗殺の時期は、まだ中国が北朝鮮に大いに肩入れしている時期でしたので、中国からの強い後ろ盾を期待し、また米中間の終わらない対立を利用して、強気に出ようとし、ついにICBMの発射実験の可能性を匂わせていました。

その矢先、中国が新型コロナウイルスに襲われ、習近平国家主席の中国は、完全に新型コロナウイルスへの対応に追われることになります。ご存じの通り、その感染は広がる一方ですし、中国の経済活動を大幅に制限するような事態に陥っているため、中国としては、一切の“対外工作”を停止することになりました。もちろん、北朝鮮へのサポートも。

そしてそのような動きに呼応するかのように、北朝鮮側も新型コロナウイルスの北朝鮮国内での感染を防ぐべく、中朝国境を閉じ、空路も陸路も閉鎖しました。結果、国民は飢餓状態に陥り、暖冬の日本とは反対に、非常に厳しい寒さに直面している北朝鮮は、一気にマヒ状態に陥りました。ここにCOVID-19が国内に蔓延することになると、体制を根本から崩壊させることになりかねないため、ただただ苦境を耐え忍ぶしかない状況に追い込まれています。このまま放置していても、金体制の崩壊は時間の問題だと思われますが、そこに追い打ちをかけそうなのが、一度出してしまったカードである「ICBM発射実験再開の可能性」です。

先週号(「中国、韓国、北朝鮮が経済破綻。『新型肺炎』を仕掛けたのは誰か」)で、「もし、今回の新型コロナウイルスの蔓延が、アメリカが仕掛けた対中バイオテロだとしたら、それは中国経済のみならず、同時に北朝鮮と韓国をも一網打尽にしてしまう狙いがあるのではないか」とお話ししましたが、「ICBM発射実験再開の可能性」の言及は、北朝鮮にとっての破滅の可能性を高める結果になるかもしれません。

世界が新型コロナウイルスの蔓延の恐怖に気を取られている間に、トランプ大統領とその側近たちは、【ICBM発射時の迅速な対応】について着々と準備を進めていたようです。

15名ほどから入手した情報を総合すると、「金正恩氏の斬首・暗殺」(ソレイマニ・モデル)から、「小型の戦略核弾頭を搭載したピンポイントミサイル攻撃や地中貫通弾バンカーバスターを用いた攻撃」など、方法には幅がありますが、どれも北朝鮮の金体制の終焉と国家としての崩壊の可能性に言及する内容でした。

最近、トランプ大統領は側近に対し、「11月3日の大統領選が終わるまでは、金正恩氏のとの首脳会談に応じるつもりはない」旨、伝えました。同時に、実務者協議についても、具体的な成果、つまり北朝鮮の非核化の完全実施とその確証が得られない限りは、実施に応じないとの指示を出したようです。

それは、【11月3日以前に対北朝鮮制裁を解いたり緩和したりすることはない】との方針と考えられます。

新型コロナウイルスの蔓延により、中国の後ろ盾を失い、新型コロナウイルスを恐れるあまり経済活動をマヒさせ、食糧難を引き起こした北朝鮮の金正恩氏の“生命線”は何か。

「核兵器を持つ限りは、自らは殺されない」という過信です。かつてのリビアのカダフィー氏が核廃棄に応じたがゆえに、後日惨殺されたことと、今年初めのソレイマニ司令官の暗殺を受けて、これまでよりも「核兵器の開発とICBMの配備」に自らの生き残りを託しているとしたら…。

見事にトランプ大統領が描いた【北朝鮮崩壊のシナリオ】に乗せられて、半ば暴発するかのようにICBMの発射実験や核開発への回帰を持ち出し、瀬戸際外交に打って出るかもしれません。

そうなると「アメリカおよび国民に対する差し迫った国家安全保障上の危機に備えるため、北朝鮮を攻撃せざるを得なくなった」と、この大統領選イヤーに北朝鮮攻撃に舵を切るかもしれません。何しろ、これまでのアメリカ大統領選挙の年に支持率向上のために最も用いられた手段が、【国家安全保障のための戦争開始】だと言われているのですから。

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トランプ大統領にとっては、自らの大きな支持基盤でもある軍需産業からの“要性”に応えることもできますし、開発が続く最新兵器のテストグラウンドを得ることになるわけですから、苦戦するようなことがあれば、頼りたくなるかもしれません。そして何よりも、開戦一歩手前で踏みとどまった過去の大統領たちや、韓国への波及効果を懸念しなくてはならなかった状況とは違い、すでに韓国を切り捨てたトランプ大統領とアメリカにとっては、北朝鮮攻撃のハードルはこれまでになく低いと思われます。

新型コロナウイルスの蔓延により中国の影響力が削がれている今、このところ低下の一途を辿っていたアメリカのアジアにおけるプレゼンスを取り戻し、圧倒的な状況に回帰する千載一遇のチャンスが訪れているのかもしれません。

実際のところはどうでしょうか。

何が起こるかは、最終的には皆さんのご想像にお任せしますが、私は大変恐怖心を抱いています。

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image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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