新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正をめぐり、改正案に賛成する方向の立憲民主党執行部と「私権制限」を懸念する所属議員との間で見解がわかれ、SNS上で論争になっていると、毎日新聞、産経新聞などが報じた。
立憲の山尾志桜里衆院議員は、特措法に関する枝野幸男代表のツイッターでの発言に対し「賛成から逆算しているせいなのか、かなりずさん」とかみつきました。 https://t.co/l73HvSRdtQ
— 毎日新聞 (@mainichi) March 10, 2020
ツイートで論争
山尾志桜里衆院議員は、特措法に関する枝野幸男代表のツイートに対して「賛成から逆算しているせいなのか、かなり杜撰(ずさん)なので問題点を指摘します」と投稿。「もちろん今日12時からの会議でも発言しますが、時間がないし国会議員の腰がひけまくっているので、皆さんにまずシェアします」と続けた。山尾氏がずさんだと厳しく言及した枝野氏のツイートは以下である。
枝野代表のツイート
⑵法改正することなく、新型コロナウイルスに同法を適用することは可能であり、適用すべきです。
その上で、「緊急事態」が注目されています。しかし、今議論されているのは、憲法改悪で言われている「緊急事態条項」とは異なり、現行憲法で認められている範囲で「緊急事態」に対応するものです。
⇒— 枝野幸男 りっけん 立憲民主党 (@edanoyukio0531) March 8, 2020
⑷警察庁法の「緊急事態」は、都道府県警察を一時的に内閣の統制下に置くもので、民主的統制の点から問題があります。そして、災害対策基本法による「災害緊急事態」が布告された場合は、内閣に、国会閉会中等の場合に政令で私権制限できるという強力な権限(緊急政令)が認められます。
⇒— 枝野幸男 りっけん 立憲民主党 (@edanoyukio0531) March 8, 2020
⑹新型インフルエンザ等対策特別措置法では災害対策基本法のような緊急政令の制定権等は認められていません。発令要件について「原子力緊急事態」の方が明確であるという違いはあるものの、「新型インフルエンザ等緊急事態」は、私権に対する制約について「原子力緊急事態」と比べても抑制的です。
⇒— 枝野幸男 りっけん 立憲民主党 (@edanoyukio0531) March 8, 2020
⑺同じ「緊急事態」という言葉に惑わされがちですが、定義・効果が曖昧で拡大解釈の余地がある場合と異なり、憲法の範囲内で法的効果が明確に限定されていることは、知っておくべきだと思います。
なお、福島第一原発事故による「原子力緊急事態」宣言は、今現在も継続中です。(終)— 枝野幸男 りっけん 立憲民主党 (@edanoyukio0531) March 8, 2020
山尾氏のツイート
山尾氏は、緊急事態宣言に踏み切る際の「国会の事前承認」を改正案に盛り込むよう訴え、修正されないようであれば反対すべきだと主張した。党内からも、何か「歯止め」となるような策が必要だという声も多くあがっている。
③今日にも国会承認(宣言時は例外的に事後承認)と期間短縮(例えば2年→半年)を入れて改正提案すればよい。
やらないならその理由は民主党政権でつくったメンツ、国対委員長間で握ったメンツ、そして最低限の修正が叶わなければきちんと反対し社会に問題点を明らかにする覚悟のなさ。
— 山尾しおり (@ShioriYamao) March 9, 2020
⑤報告さえすれば、宣言も延長もし放題。宣言や期間や措置の根拠を正すための市民イベントも開催禁止できる。外出自粛要請も、保育園や老人ホームの使用禁止も指示できる。
これが、国会承認までは不要で国会報告で足りる「抑制的な私権制限」なんですか?私はそう思わない。
— 山尾しおり (@ShioriYamao) March 9, 2020
⑦ここ数日、SNSで問題点と解決策を発信し続けています。コメントも見てます。真摯な感想や建設的な提案に感謝してます。
「新法いらない。現行法でいい」と意見する方にも知ってほしい。民主党政権時の法律でも正しいとは限らない。ノーチェックで緊急事態宣言は立憲主義に反しますよ!
— 山尾しおり (@ShioriYamao) March 9, 2020
⑨本当に怪文書の効果しかないなら放置しておくのですが、結局この紙が出てきてからというもの、この紙どおりの修正案が示され、この紙に沿った枝野代表ツイートがなされているので放置できません。
12日の本会議採決とかも勝手に約束されてるし。問題意識共有して頂けたらぜひ発信を!— 山尾しおり (@ShioriYamao) March 9, 2020
枝野氏「緊急事態という言葉に振り回されないで」
山尾氏のツイート投稿後、枝野氏も再度ツイート。平時に比べて緊急事態の際の私権の制約が大きくなっていることを認めた上で、「一般の国民の皆さんに関係しうるのは、みだりに外出しないという要請にとどまります」とし、デモや集会そのものを規制できる規定や報道や放送、表現に関しての規制などの改正は提案されていないと説明。「緊急事態」という言葉に振り回されないよう呼びかけた。
しかしなぜ、枝野氏と山尾氏はSNS上で議論を行なったのか。本来なら党内で直接議論し、意見をまとめるべきことではないのだろうか。ここにきて、最大野党の立憲民主党の中で不協和音が鳴り響いている。
※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。
image by: 立憲民主党HP/Mukimuki52 / CC BY-SA