小池さんが即断即決の能力を備えていることについて、身近なお話しをしておきましょう。おなじみ西恭之さん(静岡県立大学特任助教)のケースです。
1994年夏、スタンフォード大学で政治学を学んでいた西さんが夏休みに日本の政治家のもとでインターンをしたいと言ってきました。日本の大学生には少ない積極性ですから、私は大臣経験者を含む数人の親しい政治家に西さんの要望を伝えました。しかし、それからあとは日本的な光景が展開され、時間ばかりが経過していきました。履歴書が欲しいとか、その内容を評価してからでないと返事できない、というのです。
それでは夏休みが始まってしまいます。そこで私は、まだ衆議院議員1年生だった小池さんに電話しました。小池さんは、その場でOK。日本に戻ったらすぐに顔を出して欲しいということになりました。私との信頼関係では、ほかに依頼した男性議員たちも同じようなものだったのですが、同じ私からの情報を前に、それをただちに評価して、可否を決められるかどうか、そこに政治家としての資質がのぞいてきます。
そんな小池さんです。難問山積の日本国の指導者として、特にコロナをはじめとする有事と向き合いながら国の舵取りをしていくという点では、抜きんでた能力を備えていることは間違いありません。
小池さんの致命的とも言える課題は、人の意見を聞くことに精力を割かないという点です。とにかく「私は『戦略オタク』」と言うくらい、よく本を読み、勉強もしています。私の意見を聞いてくれたことも少なくありませんが、やはり重点正面に広く目を配り、日頃から人材を配置して政策を練り上げておくことを怠っている印象は否めません。相手に話をさせず、自分の考えを喋りすぎる点は指導者としてあらためなければなりません。
前進することは得意でも、後始末ができないのも有事型の人間に共通する欠点です。小池さんとしては、常に出口戦略をはじめとする「後始末」をきちんとやってのける人材を動かしておく必要があります。
コロナの事態が収まり、中止が囁かれるオリンピック・パラリンピックの問題を乗り切ったとき、小池さんが東京都知事を跳躍点として日本国の頂点に立つことができるかどうか。それは、中曽根元首相が私に「首相になるために10年準備した」と述懐したような地道な努力を、小池さんなりに実行するかどうかにかかっていると思います。(小川和久)
image by: 小池百合子公式Facebook