言ったもの勝ち。なぜ政治の世界でかくも学歴詐称が横行するのか

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露見した場合は公職選挙法の虚偽事項公表に問われ、議員失職もあり得る「学歴詐称」。それでも政治の世界ではこれまでも繰り返し発覚し、そのたび世間を大きく賑わせ続けてきました。斯様な学歴詐称、なぜなくなることがないのでしょうか。その「根深い理由」を、今回のメルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』でコンサルタントの今市太郎さんが考察しています。

政治の世界ではなぜ学歴詐称が横行するのか?リスクは断然高いが決着までに時間がかかるのが魅力かも

個人投資家としてFXや株式投資をしていますと、全くもって無力感を感じるのが学歴の問題です。たとえ有名国立大学を卒業していようが留学経験があろうが儲からない輩はいつまで経っても儲からず、むしろ状況を把握しどうすればいいのかを全て瞬間瞬間で自己判断できる強い精神力をもとめられるものであることを日々痛感させられます。

ただ、米国ウォール街の金融機関やヘッジファンドなどでは数学や物理学の修士、博士号の学歴をもった人物の採用が当たり前になっており、とくにクオンツと呼ばれる職種は高度な数学・物理学を用いて、市場動向や企業業績の分析・予測、投資戦略や金融商品の開発・考案を行う数理分析専門家が必須でアイビーリーグや西海岸スタンフォードなどのMBAホルダーですなどといってもまったく相手にされない特別な雇用の世界が展開されはじめており、ここだけは個人投資家の世界とは異質の状況が展開されはじめています。ただ、結果から見ますとクオンツだけが金融市場で全戦全勝で大儲けできているわけではなく、業界的には必須の学歴でもマクロ的に金融投資を行う場合にはそれが全てではないというなかなか皮肉な結果を垣間見ることもできる状況です。

政治家の世界では綿々と続く学歴詐称疑惑の輩の出現

過去30年程度の政治家の学歴詐称問題を改めて調べてみますと、中部地区でラジオパーソナリティとして活躍していた新間正次氏が、92年の参議院選挙立候補時に明治大学中退と広報に記載した記述が虚偽であったことが判明し、とうとう最高裁まで争うことになりましたが結局選挙から2年後の94年7月に禁固6月執行猶予4年の有罪判決が確定しています。名古屋地区ではメイダイというと名古屋大学を連想することからこの学校中退としたのではないかといった憶測も流れましたが、どうもまんざら嘘ではなかったようです。

2004年には民主党衆議院議員であった古賀潤一郎氏がペパーダイン大学卒業と選挙公報に掲載していた経歴が偽りではないかとの疑惑が浮上し、同氏は卒業証書を受け取ったがなくしたなどと苦しい弁明に終始しましたが、当該大学が卒業していないと発表。公選法違反で告発されましたが、結果的に福岡地検は起訴猶予処分としたものの、2004年9月に辞職に追い込まれています。

1996年野村沙知代氏が当時の新進党公認候補として衆院選に立候補した際にもコロンビア大学留学と経歴を記載したことから公職選挙法違反の疑いで告発されますが、当時検察の若狭勝検事と捜査員がわざわざ現地まで出向い調査したにもかかわらず決定的な証拠は得られず、嫌疑不十分により不起訴となっています。

こうしてみますと学歴などというのは実に簡単に事実が確認できるものだと一般人は思うわけですが、国内の学校ではさすがに中退でも事実はばれるものの海外の大学の場合には留学や卒業という事実は意外にはっきりしないもので、また公職選挙法違反で告発されても上記のケースを見る限り有罪が確定することは少ないことがわかります。小池知事がこうした事実をもとに頑強にカイロ大学卒業と言い張っているのかどうかはわかりませが、一般人の民間社会における学歴詐称による信用失墜の現実から考えますとどうも失うものが少ない印象があります。数年前ショーンKなる人物が学歴詐称でぶっ叩かれたときにはすべてのメディアの番組から降板を余儀なくされ、社会的にも経済的にも簡単に立ち直れないほどの制裁を受けたことを思い出しますが、どうも政治の世界はこれとは違うものがあるようです。なんとも不遜な発言ではありますが、選挙というプロセスでは厳しい法律があるにも関わらず言ったもん勝ちの雰囲気も強く感じさせられます。この領域に嘘をつく輩は最初から確信犯で、嘘が露見しても徹底抗戦するというのも一つの共通パターンになっているように思われます。

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