一方で、巷間言われているように、AとBに分裂があるのであれば、検察の活動でAもBもダメージを受けているという可能性もあります。
その一方で、二階俊博氏の動きとしては、ABCを何とかまとめてキングメーカーに、また、小池氏や維新の動向によっては、再編のキーマンにもというかなり欲張った構えであるようにも見えます。
そう考えると、何となくですが、安倍政権(Aグループ)というのは足利政権のようになってきていて、下手をすると一気に乱世になるのかもしれません。つまり、1970年代から80年代の自民党の抗争、そして90年代の崩壊という歴史が繰り返される可能性ですね。
時代が時代なので、そのようなことをやっている暇はないという批判も可能ですが、同時にそのぐらいのエネルギーがなければ、この難しい国家の運営など無理だという見方もできます。いずれにしても、今回の河井事件というのは、もっともっと掘り下げて見て行った方が良さそうです。
そんな中で、一つ非常に心配なのは、安倍政権が「マジック」を使っていたという問題です。安倍政権は「保守世論にフレンドリー」だという印象を巧妙に使いながら、日韓合意(結局は失敗でしたが)、譲位と改元、オバマとの相互献花外交、核不拡散などの中道政策を実務的に積み上げてきました。
安倍政権に批判的な人は、もっと中道寄りのイメージのある政権を望むかもしれません。ですが、中道を気取りつつ政治的な覚悟の足りない政権の場合は、政治に行き詰まると結局はナショナリズムに「おもねる」姿勢を取って破滅的な判断をしてしまうことがあります。
戦前に、最終的に総動員法へ行くような権力集中への道筋を作ったのは、政友会よりもむしろ民政党系の政治家でした。近年では、何の根回しもせずに尖閣国有化に走って日中関係を壊したのは他でもない民主党の野田政権でした。
安倍政権が嫌いな人は、岸信介の孫であり、改憲を常に口にする安倍総理の姿勢には「かつて国を滅ぼした軍国主義」の亡霊を重ねることで「本能的な危険」を感じているのでしょう。そのことは分からないでもありません。ですが、実際にこの安倍政権がやってきたことは、中道実務政権に他ならないことを考えると、脆弱な中道政権を作ってそれが保身に走って右傾化するリスクと比較すれば「はるかにまし」とも思えます。
百歩譲って、世論にあるのは、そんな複雑なことではなく、コロナ危機と経済不安の中で「人心一新」への期待があるだけなのかもしれません。ですが、そうした「人心一新」で国が良い方向に変わったかというと、近代日本の歴史の中では概ね反対の結果になっています。
いずれにしても、今回の河井夫妻のスキャンダル、整理して考えると、
- 事件そのものは悪質だが、法的には玉虫色
- その裏の権力構図は不透明だが複雑そう
- 一方で世論にあるのは漠然とした人心一新期待だけ
ということで、冷静に、しかし緻密に見ていくことが必要と思います。
image by: 河井あんり - Home | Facebook