石破でも岸田でもない。自民「内乱」で総理の椅子に座る男の名前

 

そんな中で出てきたのが「敵基地攻撃能力」ですが、まず、仮想敵としてはどう受け止めるかというと、「ハイテク日本が強大なアメリカと連携して先制攻撃能力を高めるのは脅威」だなどというカマトトな反応をする可能性はゼロです。そうではなくて、「軍国日本の亡霊復活」だから「俺達被害者の正義は益々光り輝く」ということで、調子に乗ってくるのは間違いありません。

勿論、防衛当局はそのぐらい分かっていますから、そうならそうで軍拡競争になれば、軍事費も増えて結構というようなハコモノ浪費癖の防衛バージョンを狙っていると考えられます。

もしかしたら、太郎氏は、そうした防衛族のモメンタムに乗っかろうとしているのかもしれません。ですが、そうなると、地方票はともかく、中道左派票は逃げるでしょう。

但し、石破さんより太郎さんには強みがあるわけです。それは現在進行形で国際情勢に深くコミットしているということ、そして英語ができてしまうので、ホンモノの人脈を作れてしまっていることです。そうなると、この危険極まる「敵基地攻撃能力」にしても、中谷、小野寺、石破といった面々よりもずっと2020年のリアルな国際政治、国際社会における判断ができるわけで、その情報量ということでは、大きな差があると思われます。

また、地方創生ということでも、クラシックなバラマキの範囲をそれほど出ない石破流と比較すると、とにかく「イージス・アショア」をキャンセルした実績というのは、秋田と山口だけでなく、広範な支持を引っ張ることはできそうです。

加えて、ネット政治に関しては、自民党内でもセンスの良いほうですから、これも石破氏を大きくリードできるのではないかと思われます。

どういうことかというと、石破さんを刺激するのが目的という見方です。その上で、石破さんが以前力説していたように「敵基地攻撃能力」に積極的になれば、「アンチ安倍票」を石破さんから切り離す事が可能になります。反対に、石破さんが朝日新聞的な世論を捨てられないので、ハト派的な動きをすれば、防衛族との関係を遮断する事もできます。また、どっちに転んでも2020年のリアルなインテリジェンスに触れている河野さんに強みがあるというわけです。

問題はコロナ対策です。仮に早々に大きな政局があるようですと、例えばですが、小池百合子と連携して行く、例は悪いですが、小泉純一郎が初期に田中真紀子人気を利用したような提携をやるかもしれません。

以上は全くの仮説ですが、例えば河井スキャンダルということを考えると、これはどう考えても「安倍も岸田も潰す」展開になっていますし、イージス・アショアの一件については、話が豪快すぎて「政権を獲りに行っている」としか思えません。お涙頂戴の大見得というのは、これはこの人としては相当な覚悟と思います。

ですから、この2つを重ねて考えると、このような構図が浮かび上がるのは自然と思うのです。読者の皆さまはどうお考えでしょうか?

image by: 自由民主党 - Home | Facebook

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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