香港の次は、台湾。「一国二制度」を崩した中華人民共和国の横暴

 

そしてその目の先は、中国統一のための最後のパズルである台湾でしょう。2日に一度は台湾の防空識別圏に中国軍機が侵入してくるという威嚇も活発化していますし、総統選挙への工作では失敗したようですが、今後、内部分裂を起こさせるために、さまざまな牽制球が投げ込まれるものと思われます。それにいかに台湾当局が対処するか。非常に興味津々であると同時に、行き過ぎた対立が生み出し得る結果への懸念も有しています。

中国が仕掛ける国際秩序への“最後の賭け”は、香港や台湾に留まらず、One Asia構想の完成のため、アジア全域と太平洋への進出にも広がっています。

これまでに何度も触れている南シナ海への進出とASEANとの対立もその一つですし、昨今、再開された中印国境における武力衝突によって“国境問題”の終結を狙っているという動きもその一つです。

南シナ海での実効支配の確立に向けた動きはASEANからの猛反発を受けていますし、台湾同様、防空識別圏での飛行権利を巡る論争もありますが、中国政府お得意の情報戦の多重攻撃によって、ASEAN内でも分裂が起きています。

最も強硬に中国に対抗するのが、同じ社会主義を堅持するベトナムで、ここでは、かつて戦争で“勝った”アメリカを後ろ盾に付けて同じ社会主義国に対抗するという、国際政治上面白い構図を作り出しています。

ただ、その“アメリカの後ろ盾”が今、諸事情によりうまく機能していないため、中国の進出を招いているのですが、その穴を一時的に埋めるべく、フィリピンやインドネシア、タイを味方につけて中国と対峙しようとしています。しかし、カンボジアやミャンマーは親中国で、ASEAN会合でも中国に不利な条件に付いてはブロックする側に回るなど、ASEANも有効な対抗勢力とはなり得ません。

インドについては、中国と並ぶアジアの大国で、核保有国であり、次の世界経済の成長の中心と言われてきた南アジアの雄ですが、終わりの見えない新型コロナウイルス感染拡大により完全に国力を削がれ、長期にわたるコロナウイルスの感染拡大第1波は結果として、インドとその周辺国に「失われた10年」を経験させることになり、それは南アジアとしてのintegrityを一気に弱め、One Asiaを目論む中国の試みに負けて、結果として【アジアは分裂する】ことになり、【アジア】と大きく区切られる経済ブロックであり、また世界最大の人口を有数地域は、中国のsphere of influence (勢力圏)となってしまう可能性が高くなります。

それに対抗できるアジアの国は、日本と韓国のみですが、韓国については、文大統領の中国への擦り寄りにも表れているように、すでに中国のred teamに組み込まれていると考えられますので、有効な対抗策を打つことは不可能といえ、頼りになるのは、実は我が国日本だけと言えるでしょう。

その日本ですが、これまでのところ、米中2大国体制の国際秩序の中で、両にらみの非常にデリケートなバランスを保ちつつ、懸命な外交を展開していると考えます。

尖閣諸島問題は根強い対立軸として残りますが、経済面や朝鮮半島情勢という外交安全保障上の懸念事項においては、歴史上稀に見るほど協調体制が取れていますし、評価は分かれるかと思いますが、トランプ大統領のアメリカとの関係も、トランプ大統領から安倍総理への信頼の厚さもあり非常に良好ですので、米中両方に顔が効く非常に稀な存在として評価できると考えます。中国政府が北朝鮮の金王朝の首根っこをしっかりとつかんで暴発を避け、朝鮮半島有事を緊張高まる中でも抑止でき、トランプ大統領の続投かバイデン大統領の誕生かは別としても、アメリカが対アジア戦略をきちんと強化し、かつ中国との直接戦争を思いとどまることができるのであれば、今、日本が置かれている非常にデリケートで、かつ稀有な存在は、米中間の高まる緊張の狭間で重宝されるものと思われます。かつての米ソ冷戦時代の鉄のカーテンのような物理的な壁は築かれることはないでしょうが、例えるならば、日本列島が米中冷戦または緊張の均衡のラインとして位置づけられるのではないでしょうか。恐らく決して居心地のいい状態ではないと思われますが。

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