実は怖くない。人気税理士が紹介する税務調査リアルドキュメント
by ヒロ税理士のYouTubeでは喋れないお金と税金とYouTu…
前回の記事『どんな時に「税務調査」が入る?人気税理士YouTuberが特徴を暴露』の中で、どんな会社がどんな時に税務調査を受けることになるのかを教えてくれた、チャンネル登録者数10万名超のYouTuberヒロ税理士。今回は自身のメルマガ『ヒロ税理士のYouTubeでは喋れないお金と税金とYouTubeの話!』の中で、実際に税務調査の予告から、実際に行われる日の中身やスケジュールについてこまかく紹介してくれます。「税務調査は怖い!」というイメージのある方、必見です。
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リアルな税務調査の実態
今日の本題では、前回の続編として、税務調査について再度取り上げます。
(1)調査の事前準備と当日の対応方法とは?
『調査=悪いことをした会社が罰せられる』イメージを持つ経営者が多いですが、決してそんなことはありません。私自身も税理士でありながら、実は過去に一度だけ税務調査を受けた経験があります。確かに気分の良いものではないですね…それでも、定期的なチェック機能のようなものなので、特に脱税行為等をしていなければ平常心で調査に臨んで頂きたいと思います。
脱税の疑い等が起因となっている強制調査とは異なり、一般の任意調査では担当の税務調査官からきちんと調査日程のアポ電話が入ります。顧問税理士がいるのであれば、通常は会社ではなく税理士の事務所に直接電話が入ります。基本的には2~3日間の候補日程が提示されますが、必ずしもそれに従う必要もありません。税務調査官は沢山の調査案件を抱えて忙しいかもしれませんが、同様に社長も顧問税理士も忙しいものです。三者の都合を調整して、余裕をもったスケジュールを組むことがポイントです。
税務調査の現場は意外にも非常に地味なもの。基本的には直近3期間の帳簿(総勘定元帳)とそれに対応する請求書や領収書等の原始資料との突合せ等が行われます。書類がしっかり揃っていないと、調査時に不都合になるので要注意です!
まずは必要書類がきちんと揃っているか確認するためにも、出来れば調査の実施日まで最低2~3週間程度は余裕を持っておきたいところですね。下記一覧を参考にして下さい。
- 過去3年間の帳簿書類(総勘定元帳仕訳帳・振替伝票等・現金出納帳・補助簿等)
- 過去3年間の領収書や請求書等
- 決算関係書類
- 稟議書等の準備
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
税務調査を受ける場所については、税務署ではなく基本は会社の会議室や事務室等になります。しかし、これには厳格なルールはありません。自宅兼オフィスの場合等どうしてもプライベート空間に入られるのが抵抗あるという時は、実は顧問税理士の事務所にて調査を受けることも可能なのです。ただし、先程の調査必要資料を事前に会社から移動しておく必要があり、ひと手間かかることは覚悟する必要があるでしょう。
調査当日は通常朝10時ジャストに調査官がやって来ます。初日の午前中は社長同席のもと会社概要についてのヒアリングが。12時からはきちんとお昼休憩をとり、13時から調査再開し16時頃には一旦終了します。最終日には早ければ午後一から指摘事項や修正予定項目の説明がなされて実地調査はそれで終了。以上が調査当日のスケジュールです。
調査に立ち会うべき人間は、社長と経理担当者、顧問税理士です。しかしながら社長業は日々忙しいもの。代理人である顧問税理士がきちんと対応してくれるのであれば、社長が同席するのは例えば初日の午前のみの短時間とし、後は顧問税理士と調査官のみで調査を進めるというのでも可能です。
もしあなたの会社にまだ顧問税理士がいないようであれば、これらの対応を社長一人または経理担当者と二人でしなければなりません。専門知識が乏しいようであればかなりハードでしょう。
(2)どのような項目がチェックされるのか?
税務調査では時間の許す限り、通常の対象期間である3期間分の経理処理等を網羅してチェックされます。具体的な項目を列挙すると次のようなものがあります。
(法人税関係)
- 売上の計上漏れや除外はないか?今期計上すべき売上高が翌期に計上されてないか?
- 帳端分(請求書締日~決算日の売上高)の漏れがないか?
- 在庫・仕掛品・仕掛工事や制作中の案件に関して正しく評価して在庫計上されているか?
- 出張旅費規程は作成されているか?
- 交際費・会議費・福利厚生費を正しく区分経理しているか?
- 修繕費の中に資産計上して減価償却すべきものはないか?
- 保険料の中に資産計上すべきものはないか?
- 融資の信用保証料の繰延前払処理は正しいか?
(消費税関係)
- 課税・非課税・不課税の区分は適正か?
- 外注費について雇用契約と判断できるものはないか?
- 簡易課税に関して業種区分(第一種~第六種)に誤りはないか?
- 一般課税に関して仕入税額控除の要件(帳簿・請求書等)を満たしているか?
(源泉所得税関係)
- 架空人件費の計上はないか?
- 「扶養控除等申告書」の提出はされているか?(※源泉徴収を適正に行うための必要書類であり、これがないと高い税率で徴収されることになる。)
- パート・アルバイトも正しく源泉徴収しているか?
- 退職金に関して源泉徴収されているか?「退職所得の受給に関する申告書」は作成されているか?
- 役員退職金に関する株主総会議事録や役員退職金規程が作成されているか?
- 非常勤役員の給与は不相当に高額ではないか?
- 給与課税(=源泉徴収)されるものに漏れはないか?(賄いなど)
業種ごとに重点的に調査されるポイントはあるものの、基本的に網羅的にチェックされると考えて下さい。
なお、調査において指摘された事項について、それを実際に修正することを『修正申告』と言い、次回以降改めるという行政指導に留まることを『指導』と言います。調査官のタイプにもよりますが、『この指摘事項はおかしい!』と思われた場合は徹底的に対抗することをお勧めします。交渉してそれが100%通るという保証はありませんが、全面的に受け入れなければならないとも限りません。
もちろん、プライベートで使われるようなブランドの衣服やカバン、腕時計等はまず交渉の余地無し。一方、車の減価償却費やゴルフ代、飲み代等は実態があれば経費性に何ら問題はありません。
『接待交際費のうち20%はプライベート使用分と考えて否認します』と言うタイプの調査官が稀にいます。調査官の言動は何事も正しいように聞こえるかもしれませんが、むやみやたらにこれに乗ってはいけません!この20%という否認率が実際に妥当なのかどうか?については、あくまで税務当局側に『経費性がないこと』を立証する責任があります。本当にこの20%分が完全プライベートなものであれば調査官の言い分は正しいですが、事実関係をしっかり説明して対抗出来るよう日頃から心掛けておきたいものです。
最後に付け加えておくと、世の中の多くの社長がそうであるように、税務調査に対して拒否反応を示すのは仕方がありませんが、調査官に対して異常なほどの敵対心を示すのも好ましくありません。彼らも人間。当然、調査能力が高い調査官もいればそうでない人もいます。優しくて融通がきく調査官もいればそうでない人もいます。なるべく双方が紳士的な態度で調査を卒なく進めてスムーズに合意に至り、調査が終結するのが会社にとって一番良いことです。
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