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ブリヂストン「賢いタイヤ」の未来感がすごい!データで世界を革命する方法

大手タイヤメーカーのブリヂストンがデータを活用する「賢いタイヤ」という戦略を打ち出しました。顧客にほかにない価値を提供することで競合との差別化を図る狙いについて、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが解説。JALとの取り組みから始まり、自動車向けに拡大していったときには「売り切り」から「継続」へと商売のあり方も変わっていくと期待を示しています。

なぜ、ブリヂストンのタイヤは“賢い”のか?~IT製造業としてデータで差別化を図るチャレンジ

ブリヂストンが「賢いタイヤ」という考え方で、新しい仕組みを構築しています。単にタイヤを作って売るだけでは、競合と差別化できなくなり、最後は価格での競争になります。そこで、「自社が持っているデータを活用しよう」ということになったのです。

今回の特集では、ブリヂストンが、データをどう自社の事業に活用していくのか、その結果、顧客はどうなるのか?ブリヂストン側のメリットは?について、事例からひもといていきます。

ブリヂストンはデータをどう活かすのか?

これまでのブリヂストンの核になってきた事業は、タイヤを製造し、販売することでした。車のタイヤに関しては、直接販売することはそれほどなく、主にディーラーや、オートバックスのような自動車関連販売店、タイヤショップや、ガソリンスタンドなどを通しての、消費者向けの販売です。

メーカーのブリヂストンとしては、どの販売店に、何を何個卸したのか、は把握できますが、実際にタイヤを使うユーザー関しては、「どんな人がいつどのような商品を買ってくれたのか」がわかりません。一方で、自動車以外ですが、飛行機のタイヤに関しては、航行時のデータを航空会社が綿密にチェックしています。

日経新聞の記事によると、5月からJALと組み、タイヤの交換事業を始めたとのこと。「航空会社が持つ離着陸時の気象や路面の状況といったデータ、整備士が確認しているタイヤの摩耗状況のデータをもとに、ブリヂストンがすり減り具合を予測し計画的に交換する」(日経新聞より)ということです。

具体的には、走った走行データや距離などから、タイヤの溝がどれくらい減ったのか、ひずみは出ていないか、などを推測して、交換時期をおすすめする、というような具合です。

データは顧客とブリヂストンにとってどんな価値があるのか?

この予測によって、すり減り具合による交換タイミングが、はやめにわかるようになるので、余分な在庫を持つ必要もなくなり、さらに人件費も削減できるようになったとのことです。航空会社は、タイヤのデータを活かすことで、第一に、より安全な運行が可能になるのです。

次に、余分な在庫を持たずにすむ、ということは、その分の倉庫代、運搬費、それに関わる人件費も、削減することができます。売り上げアップ、につなげるというよりも、コストダウンにつなげていくことができるのです。

ではブリヂストン側には、どんな価値があるのでしょうか?まずは、顧客がコスト削減できた差分を、サービス料として請求することができます。さらに、タイヤという「モノ」に、データという付加価値をつけることができます。

このデータは単なる数字の集まりではなく、そのデータから読み取った「気づき」、たとえば、最適な交換タイミング、とか、在庫数の最適な数量といった、データから得られる「知見」がたまります。これが最大の差別化ポイントです。さらに、この知見は「他社には真似できない」のです。希少性が高く、模倣が困難なのです。

こうなると発注する側も、「同じタイヤならA社よりもブリヂストンだな」、となるのです。まさに、「タイヤとデータ」の新結合による、ブルーオーシャンの登場ですよね。

ブリヂストンは今後、データをどう活かすのか?

この考え方を、飛行機だけではなく、自動車にも当てはめることができる、とブリヂストンは考えて、展開していくそうです。ブリヂストンが持つ膨大なタイヤのデータと、ドライバーの走行データが積み重なると、AIを使えば、自動車のタイヤの減り具合を推測し、未然の事故防止になったりできるでしょう。

さらに、車の種類や、走り方に応じて、「こう走ると燃費をよくすることができますよ」などと、ブリヂストンからタイヤユーザーへの、ドライブのアドバイスもできたりしそうです。

確かに、タイヤの減り具合を、毎日のようにチェックすることもないので、これまでの走行データや運転の走行距離などから、「そろそろタイヤを変える方がいいですよ」とメールが来たりすると、嬉しいですよね。AIだけでなく、5GやIoTが進んでいくと、カーナビにこのような情報が来たり、アプリなどでドライバーに教えてくれたりできるでしょう。

このようなサービスによって、ブリヂストンとしては、より大きな付加価値を、ユーザーに提供することができます。また、一般ドライバーだけではなく、運送や引っ越し業など企業にもデータ提供することで、余分な在庫を持たずにすみますし、燃費改善の提案もできるようになります。

さらに、タイヤ販売だけでは「売り切り」の商売でしたが、このようなデータサービスが出てくると、いわゆる継続課金できる、「サブスクリプション」のモデルもできそうなので、「継続の商売」に生まれ変わります。

マーケティングは、「お客様が持つ、課題や問題を解決してあげること」から始まります。データで出してくれる、「今までわかりにくかったタイヤの替え時」が、タイヤそのものに加わった「付加価値」になります。これによって無駄な価格競争から抜け出ることも、できそうです。

image by:MDart10 / Shutterstock.com

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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