「日本人はすごい」の幻想に溺れた愚策。コロナ5類感染症指定が危険な理由

shutterstock_524903815
 

新型コロナウイルスは、感染症法上の2類相当に分類されていて、感染が判明した場合の隔離や、濃厚接触者とされた場合のPCR検査の義務が生じます。ところが先月25日、加藤厚労相がこの分類を季節性インフルエンザと同等の5類に見直す考えがあることを匂わせました。これに対し「日本人の性質にまだ甘えるか」と声をあげるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。山崎さんは、新型コロナのステルス性や指定格下げにより起こる「金の問題」を指摘し、安易な見直しに異を唱えています。

格付けのこと

不自然が当たり前になる。恐いことだ。日々更新されて行く数字に慣れ、ただの数字にしか見えなくなってしまう。本当はそうじゃないことは分かっているのに。コロナ感染者数はただの数字なんかじゃない。人間の命の数である。皆、誰かの子であり、誰かの親である場合も多いであろう。決して忘れてはいけないことである。

今、政府ではCOVID19を指定感染症2類相当から5類相当へ格下げすることが検討されているという。終息はおろか、収束の目処すら立っていないのに敵を低見積もりとは随分大きく出たものである。この報に触れた時、本当にこう思った。「我が政府、終に狂せり」と。

しかし蓋を開けてみれば何のことはない。苦し紛れの数字操作に過ぎないことが分かる。要は病院がパンク寸前(あるいはパンク同様)なので入院の勧告・措置の必要がない5類にしてしまえということなのである。そう、患者数のデノミである。批判を覚悟の上で敢えて不穏当な比喩を用いると「刑務所がいっぱいなので窃盗までは罪に問わない」と言うのと理屈の上では同じである。こんなバカな話があるか。

そもそも5類相当と言えば、季節性インフルエンザと同格である。むろんインフルエンザもシーズンごとに多くの死者を出す恐ろしいウイルス性感染症であることは疑うべくもない。ただインフルエンザには(知る限りにおいてだが)無症状感染者はいない。突然の高熱、疼痛、疲労感に襲われ仕事や学校どころではなくなり、2、3週間は通常の生活には戻れない。故に多くの人がそれを警戒し、さまざまな予防策を講じる訳である。

この季節性インフルエンザとCOVID19が同日の論である筈がない。片や極めて潜在性の高いステルス感染症である。このウイルスは相手が弱いと見るや忽ち顕在化し、重症化させ命をも奪い去ってしまう。逆に相手が強ければ感染を拡げるという仕事をさせるだけさせてそのまま消えてしまう。

仮に季節性インフルエンザが無症状だったら、一体誰が仕事や学校を休むだろうか。そもそも病院にすら行かないだろうから、自分が感染しているかどうかさえ終に知らないままであろう。COVID19はまさにこれである。無自覚にして拡大する感染症なのである。

print
いま読まれてます

  • 「日本人はすごい」の幻想に溺れた愚策。コロナ5類感染症指定が危険な理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け