「日本人はすごい」の幻想に溺れた愚策。コロナ5類感染症指定が危険な理由

 

今これに5類相当のお墨付きを与えてしまえば、無自覚無症状感染者に加えて有自覚無症状感染者までもが市中に出回ってしまうことになる。病院では以下のような会話が医師・患者間で行われるかもしれない。
「あなたは残念ながら新型コロナウイルスに感染しています。でも特に入院や隔離生活の必要はありません」

これでは収束どころか感染状況の把握すらままならぬ事態になりかねない。因みに5類感染症の場合、医師の届出義務は7日以内となる。新型コロナに限らず、感染症対策において初動の遅れは致命的である。何より感染症対策の第一戒律たる隔離(quarantine)を無視するつもりなのか。

問題は他にもある。仮に5類相当となったら医療費は全額自己負担となってしまうのである。そうなると経済的な事情で治療や入院を拒む人も出て来るかもしれない。抗ウイルス薬「レムデシビル」は1回分(5日間、6本)で25万円である。最高で2回投与されるから合計50万円。保険適用により3割負担になっても15万円。誰にでも払える額ではない。しかも効く保証のない「Hail Mary」的治療である。酸素飽和度94%以下、重症化するかどうかの瀬戸際に、またあるいはECMO導入後、生きるか死ぬかの緊急時に、金の問題が影を落とすようではこの国の医療はおしまいだ。

ここ最近の政府のコロナ対策を見て思うのは「何か、日本人に甘えてはいないか」ということである。たまたま重症化しにくい日本人、もともと衛生観念が醸成されている日本人、どういう訳か自粛という言葉に厳格な日本人、こういった日本人に甘えっぱなしではないか。さて今度はお人好しの日本人とでも言うつもりか。あるいは調子に乗っておバカとでも呼ぶつもりか。これ以上の甘えは許さない。小手先の数字操作で、誤魔化すな。その場しのぎの施策で、煙に巻くな。

もう我々は向き合うしかないのである。「with Corona」は「without Corona」を実現するための時間稼ぎである。時間稼ぎならつらいのは当たり前だ。焦れるのは当たり前だ。無理が出るのも当たり前だ。誰もが皆ギリギリのところで戦うしかない。それでも負けさえしなければ、倒れさえしなければ、これは間違いなく勝てる戦である。希望は常にあるのである。だから今、今こそが目をそむけずに向き合うべきその時なのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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