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1位は本厚木「住みたい街ランキング」異変に見るコロナ時代の住宅選び

世界の人々の常識を変えた新型コロナウイルスは、日本人の「住居」に関する意識も大きく変化させたようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、とある企業が行った「住みたい街ランキング」の結果を分析。さらに郊外への脱出を考え始めたという、都心の分譲マンションに暮らしている方の「本音」を紹介しています。

郊外への転居を考え始めた人たちの本音は…

こんにちは!廣田信子です。

住宅・不動産ポータルサイトなどの企画・運営を行う、「LIFULL」が、「コロナ禍で借りて住みたい街(駅)ランキング」を発表しました。

『LIFULL HOME’S コロナ禍での借りて住みたい街ランキング』首都圏版が公開

1位は、小田急小田原線の「本厚木」となりました。本厚木は、新型コロナウイルス感染症流行前の借りて住みたい街ランキング(2019年・年間調査)」でも4位にランクインした人気の街ですが、都心・近郊エリアが軒並み順位を下げた中、準近郊・郊外エリアに位置する街の代表格としてトップに躍り出ました。

他にも、「大宮」「千葉」「八王子」「津田沼」「立川」「八潮」「平塚」など、都心のオフィス街から離れた街が上位に多数登場しています。上位の街の共通点は下記2点です。

リモートワーク(在宅勤務)を導入する企業が増え通勤時間への考慮が軽減したことで、都心近くの利便性だけでなく、「感染リスクに対する安全性・安心感にも着目して住むところを選びたい」という意識が高まったことがうかがえます。

一方、同ランキングにおいて4年連続1位を記録していた「池袋」は今回5位に後退。同じく都心・近郊の人気エリアである「三軒茶屋」が11位、「川崎」が12位へと後退。

コロナ禍で都心・近郊の生活利便性よりも準近郊および郊外の相対的な安全性や安心感を重視。在宅勤務にも適した住環境であることも重視して街選びをしようという意向が見えます。

さらに、賃貸ユーザーの「郊外化志向」は1都3県の範囲にとどまらず、より都心から離れたエリアにも拡散している可能性を考え、首都圏周辺に位置する6県(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、静岡県)も対象に含めた「【1都9県】のランキング」も発表しました。その結果、問合せ件数のランキングは…

1位 「水戸」
2位 「本厚木(首都圏1位)」
3位 「宇都宮」

と、上位3位に都内の街が含まれないランキングとなりました。また、「コロナ禍での問合せ増加率ランキング」(首都圏版)(2019年の同時期と比較し、2020年に問合せ数が増加した率)では、千葉県郊外エリアの街がベスト3を独占しました。

1位 「八街」(増加率146%)
2位 「姉ヶ崎」(同140.3%)
3位 「大網」(同134.7%)

1位の「八街」は、千葉県郊外に位置し、JR総武本線で千葉や東京にもダイレクトアクセスが可能な街です。

4位以下にも「相模原」(同133.8%)、「小田原」(同127.9%)などいずれも都心から50km圏を超えるエリアに位置する街が並び、コロナ禍における賃貸ユーザーの「郊外化志向」が明確に表れる結果となっています。

また、このランキング上位にはJR内房線、JR高崎線、JR東海道本線、東武伊勢崎線をはじめ、都心・近郊から首都圏郊外まで延伸する長距離運行の鉄道沿線の街が数多く登場しています。「公共交通機関での通勤・通学にもスムーズな郊外」がコロナ禍で賃貸ユーザーに注目されていることがうかがえます。

では、逆に問い合わせが減ったところは…というと、「コロナ禍での問合せ減少率ランキング」(首都圏版)では、減少率1位「秋葉原」は43.9%まで減少。

2位以下は、「仙川」(対前年同期比44.3%)、「西日暮里」(同47.6%)、「笹塚」(同50.7%)、「菊川」(同51.6%)「新宿」「高田馬場」など学生で賑わう街も軒並み減少。15位までのほとんどを都内が占めています。都心・近郊の交通・生活利便性のバランスが良い街が軒並み半分程度の問合せ数に激減しました。

2020年4月に入学した学生は、コロナ禍を受け通学する機会がないままオンラインで授業を受けている場合も多く、大学等の周辺や沿線周辺に居住する必要がないことが、問合せ減少に繋がっていると思われます。

減少率ランキングに登場する街の多くは、最寄り駅にターミナル性や交通条件が整っており、生活・仕事・余暇と全てがその街で完結し得るだけのポテンシャルがあります。しかし、コロナ禍にあっては、この繁華性・利便性が逆にあだとなり、「住みたい街」としての注目度が減少する要因になったと考えられます。

賃貸の動向なので、マンション購入者の意向より若い世代の考え方が反映されていると思いますが、移り住むのが簡単な賃貸だからこそ正直な今の感覚が反映していると思います。実際、私の周辺にも、これまでまったく眼中になかった郊外の不動産を調べた人がけっこういます。

コロナ禍で、密集して暮らすことへの不安や、リモートワークで通勤の必要性が減ったことが大きな要因であることは間違いないと思いますが、住居費(家賃やローン)の家計に占める大きな割合が、本当に意味がある必要な負担なんだろうか…と問い直したことも大きいと思います。

郊外に行けば、住居費が半分近くになり、浮いたお金を、生活を豊かにすることに使えます。今の世帯収入を維持し続けなければならない…というプレッシャーからも解放され、人生の選択肢が増えます。

郊外への脱出を考え始めたという都心の分譲マンションに暮らしている方が、本音を聞かせてくれました。

コロナ禍の今なら、郊外へ引っ越すのも「都落ち感」がなくて、なぜ?という説明もいらないし、堂々と宣言できる。狙い目は、近くに有名な私立の中学・高校がある郊外。今のマンションは賃貸に出して、郊外の家は借りる。広い住宅に引越しても、今のマンションの賃貸収入より家賃の方が安い。仕事も、今はほぼリモートワークという企業もいくらでも探せるようになったから、今の会社が、コロナ後にリモートワークをやめるといったら、転職してもいい…と。

「リモートワーク」が広く採用されるようになったことで、住む場所の選択肢がかなり広くなったことは、まちがいないと思います。でも、子供がいる家庭では、子供の教育環境というところは外せないようです。

さて、子育て世帯が、いろいろ考え始めたことが実行に移され、形に見えるようになるのは、来年の3月・4月、子どもの入園や入学の時期でしょうか。注目したいと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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