世界を“麻薬漬け”にする中国。菅総理は対中依存から脱却できるか?

 

アフリカでも高まる「困った時に迅速に助けてくれる中国」という認識

同じことはアフリカ大陸でも起こっています。

一帯一路政策を通じてインフラなどへの広い支援を得ていますが、同時に債務の罠への懸念も広がり、各国内では中国拒否の感情も湧きたっていると言われていますが、実際には、多額の債務を抱え、かつ中国のコミットメントなしには進まない経済発展と維持できない政治基盤という現実があり、完全に中国に首根っこを掴まれていると言えるでしょう。

エチオピアやジブチが良い例ですが、インフラ、エネルギー、産業、通信など多岐にわたる分野への集中的な支援を受ける引き換えに、国際舞台での中国擁護に加えて、港の使用権や輸送網、通信網などの戦略的インフラを中国に渡すという状態になっており、確実にアフリカ大陸における中国の覇権拡大に寄与しています。エチオピアとジブチには、北アフリカと中東・アラブ地域の対岸という戦略的な意味合いもあり、アメリカも非公式のBlack Site(中東地域でのテロ監視のためのCIA組織本部)を置いていると言われていることで、ここでも米中間の対立は激化してきています。

アフリカでも「アメリカや欧州はいろいろとケチをつけるが、何もしてくれない。それに比べて、中国は困ったときに迅速に助けてくれる」という認識が高まっており、中国の影響力が高まっています。

では中国も位置するアジアではどうでしょうか。

すでにRed Team入りしているらしい韓国と北朝鮮、日本という北東アジア諸国は別として、東南アジア諸国は中国との距離感に苦慮しています。

南シナ海での中国の領土・領海の拡大に対しては断固反対し、警戒する一方、昨今、噂される米中の武力対立の舞台になることや、米中双方の軍事力の拡大には反対しており、米中という二者択一はできない状況に思えます。

しかし、経済面に目を移すと、他の地域と同じく、中国経済の介入と支援なしには経済が成り立たない状態になっており、その傾向が最も強いカンボジア、ラオス、ミャンマー(ビルマ)は完全に親中派ですし(注:最近、ASEANの会合などでは中国の軍事的拡大には苦言を呈していますが)、地域の大国であるインドネシアや、タイ、シンガポールについては、批判も称賛もしない“付かず離れずの姿勢”で中国との付き合いを継続しています。

南シナ海問題で直接に中国と領有権を争うベトナムやフィリピン、マレーシア、ブルネイといった対中ハードライナーたちにしても、領有権では対立姿勢を崩しませんが、実益には振り回され、フィリピンのドゥルテ大統領に至っては、中国からのワクチン優先供給という言質を取り付けることで、対中批判を緩めていますし、最も強硬派であるはずのベトナムも、中国との経済協力は積極的に推し進め、経済面では良好な関係を維持・強化しています。

結果として、先週のASEAN外相会議の様子を見てみても分かるように、中国に対して一枚岩では批判できず、温度差があるなかで、対応が遅れ、結果、中国に“動き回る時間”を与えることになっています。

では、アジアにおいて唯一、中国と対峙している大国インドはどうでしょうか。

数千キロメートルにわたる中国との国境線確定問題が最近、再燃しており、インド国内での嫌中論が高まる一方ですが、実際にはインドの経済活動も中国依存度が非常に高く、今、中国製品をインドから締め出すことは自殺行為とも言われていて、結局、伸るか反るかといったように、毅然とした対応を取ることが出来ないというのが現実のようです。インドには、アメリカや日本、ドイツも支援を行う旨、オファーしているようですが、元々「他国の施しは受けない」主義のインドは、それらの申し出も断っているとのことです。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

print
いま読まれてます

  • 世界を“麻薬漬け”にする中国。菅総理は対中依存から脱却できるか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け