世界を“麻薬漬け”にする中国。菅総理は対中依存から脱却できるか?

 

アフガン進出でプーチンをイラつかせる中国

そして驚くべきことに、アメリカと対峙するイランや、アメリカが“仲介”していると豪語するアフガニスタンでも、中国は暗躍しています。

イランについては、先日お伝えしましたが、25年間にわたる経済・エネルギー・安全保障の戦略的パートナーシップを締結し、結果、中国がインフラや運輸、エネルギー部門に膨大な投資を行う見返りとして、イラン産の原油を優先的に購入するという枠組みのおかげで、アメリカ中心の対イラン経済制裁による負の影響をオフセットする役割を担っています。

一応、スンニ派アラブとシーア派イランの“アラブにおける対立”には無関心を貫き、「すべての国の友人だが、誰の盟友にもならない」という不干渉外交を徹底することで、アラブ社会では独特の存在感を発揮しています。

そしてこの“不干渉”の典型例が、イスラエルとパレスチナ双方との友好的な関係です。国連などの国際的な場においては、公然とパレスチナの大義を全面的に支持していますが、イスラエルとは最先端技術での協力をさらりと進めるなど、まさに不干渉で、かつbusiness is businessの基本姿勢で支持を得ています(そうなると、一見、トランプにべったりのネタニエフ・イスラエル首相も相当のたぬきですね)。

そしてアフガニスタンでは、アメリカ仲介の下、アフガニスタン政府とタリバンの間での和平が進んでいると報じられていますが、実際にはうまく行っていません。

捕虜の相互交換についても、実際には進んでいませんし、トランプ政権が今年中のアメリカ軍撤退を“考えている”というニュースは、アフガニスタンでの両勢力の和平への機運をしぼませています。

そして、和平工作が頓挫している大きな理由が、中国とタリバン勢力との秘密のディールです。

中国政府は、表立っては言いませんが、アメリカ軍が撤退したら、タリバンに対して膨大なエネルギー・インフラ投資をする約束をしているらしく、それはタリバンサイドにとっては、和平交渉の遅延への高いインセンティブになっているようなのです。いろいろと尋ねても、詳細についてはなかなか情報が得られませんが、いろいろな“関係者”曰く、「アフガニスタンにおける和平プロセスの仕切りを実際に行っているのは、アメリカなんかではなく、中国だよ」とのことで、ここにも中国の影響力がかなり及んでいることが分かります。

アフガニスタンへの進出が誰をイラつかせるかと言えば、かつて侵攻して大失態を演じたロシア(旧ソ連)のプーチン大統領でしょう。

中央アジア(コーカサス)はロシアのsphere of influenceと信じてやまないロシアですが、ここ数年のうちにカザフスタンや他の“スタン”系の国々に中国の影響が及び、ロシアのグリップが効かなくなってきています。アフガニスタン問題は、私も経験上、一筋縄ではいかない非常に複雑な案件ですが、今後、中国の影響力がどのように及ぶかによっては、米とロシアという2大国との泥沼の争いに発展するかもしれません。

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