村上龍も絶句。HIS会長が語った危機的状況に対するマネジメント

 

また少し、利益とは何かをドラッカーから再確認します。

ドラッカーは利益について「利益とは、企業存続の条件である。利益とは、未来の費用、事業を続けるための費用である」。横道に入りついでに、松下幸之助さんはこれを「ダム経営」とします。そしてそれを可能にする方法について問われて「ダムをつくろうと思わんとあきまへんなあ」とつぶやかれたそうです。

これだけではヒントにもならないので、またパナソニックと考え方が相似形であるトヨタから一つの解答例を引き出します。トヨタは戦後すぐに倒産の危機を経験しており、その危機感を全社で共有して「改善に次ぐカイゼン」で継続的存続条件を築き上げました。トヨタは危機に合うとカイゼンをさらに進め、強くなろうとします。

余裕と気概と知恵があったら、リストラは行わないのです。貴重なカイゼンの源泉たる“人材”が企業の“資産”だからです。そもそも組織とは何かを、つきつめて考えなければ答えは得られません。HISの澤田秀雄さんは「コロナ渦」下の現実のなか、不確定要素一杯ですが、これしかないという模範のマネジメントを発進させています。

現下の業績を見ますと、7月の海外旅行の取扱額(8,000億円の収益中の3,000~4,000億円を占める)は前年比は99%減で、またハウステンボス事業の方も惨憺たる有様であって何をかいわんやです。テレビ番組のなかで「不安を感じないのですか」と聞かれて「感じない」と言い、それが自身の性格だとも認めています。

ここで澤田さんは、こんな言葉『失意泰然』を紹介されて、その意味は「悪い時ほど、元気にやろう」で、その方が「早く立ち直れるし、よくなれる。こんな時期だからこそ元気にやるべきだ」と。さらに「ピンチはチャンスだ」と「コロナ渦は大きな危機なので、パワーアップでも大きいのでは、その分反転も大きい。」言います。

『失意泰然』が活かせる背景となる前年度の財務内容を見てみます。2019年10月末 現金預金2,191億円(2020年4月末1,243億円 948億円減)利益剰余金1,124億円 販売・一般管理費605億円という数字です。ここで解るのは、トヨタほどではないけれど優良で、ただ売上の減が99%であり、このことは致命的ともいえる状況ではあります。

ここで浮かび上がってくるのは将来の旅行業の種は残しつつも、短期での基盤の革新の必要性で、このことを切実に感じざるを得ません。しかし、過去にこんなことを起こしています。経営を引き継いだ時のハウステンボスですが、18年連続赤字だったのを社員に消滅の危機を訴えて鼓舞し、半年で黒字化させています。

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