コロナの影響もあり、経営に苦しんでいる企業や店舗が増えています。長引く不況や危機的状況に陥った時、敏腕経営者たちはどのようにそれを打破してきたのでしょうか。メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんが、新型コロナウイルスの影響によって現在進行系で大きな危機に晒されている、大手旅行代理店HISの取締役会長である澤田秀雄氏の戦略を例に挙げ、松下幸之助やドラッガーの言葉も引きながらその方法を紐解いています。
成功するまでやれば、成功する
過去の出来事を振り返り、理路整然と専門用語を駆使して説明するのは、それをあたかも知的かつ有能であるかのように錯覚するのですが、さて、今現在の最大の危機の対処法となるとそれどころではありません。久しぶりにテレビ番組のカンブリア宮殿を見たのですが、現在進行形のHISの澤田秀雄さんのたたずまいに、ただならぬものを感じました。
それは、松下幸之助さんが世界恐慌の時に行ったことが浮かぶからです。「未来は予測できない」というのは、ドラッカーの基本テーゼで、「しかし、予測できる未来がある。それは自分がつくる未来である」。またパラドキシカル(矛盾的)な表現である「ピンチは最大のチャンスである」という逆手のマネジメントが、今試されているのです。
この回に、村上龍は感慨を込めて、成果を実現する経営者は「とんでもないほど頑張っているので、これだけやらないと成功しないのか」ともらしています。さらに「成功の条件は」という問いかけに「成功するまでやれば、成功する」と、澤田さんがさらり言っているのには絶句するのです。
「成功するまでやれば、成功する」の言葉は、松下幸之助さんに始まり、稲盛和夫さん、日本電産の永守重信さん、そしてHISの澤田秀雄さんと共通して持っている体験知で。
ここで要らぬ解説を入れますと、成功させるに至る過程において成功の必須条件たる知恵を純正さと困苦でもって体得したと思うのです。
ドラッカーは、自身を社会生態学者と位置づけて社会の様を観察、研究してきたのですが、経営者や起業家は生なあり方として観察し、熟考し、実行し、骨肉としなければ優れた知恵の持ちようがありません。偉大であると称された経営者は「経営はアート」だと言い、全知全能を傾けて格闘する、今まさに澤田さんがそのことを現出させています。