軍事衝突が激化する一方で、水面下では協議が模索されているイラン戦争。異例とも言えるこうした状況は、国際社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、アメリカとイラン間の交渉を困難にしている要因とイスラエルの戦略的意図を分析。さらにトランプ大統領の「見誤り」が結果的に中ロを利する構図を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:ハード(戦争)とソフト(協議)が入り混じるアメリカ・イスラエル・イランの攻防の長期化が生む極めて不透明な国際情勢
「いいサプライズ」は起きるのか、それとも長期戦か。アメリカ・イスラエル・イランの攻防が生む不透明な国際情勢
「お互いに激しく罵り合い殴り合いをしながら、もう一方の手で握手して必死に現状からの出口を探している」
今、アメリカのトランプ政権とイランが置かれている状況を言い表すのにぴったりな表現だと思います。
連日、アメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃が行われていますが、イランも負けてはおらず、連日、イスラエルにクラスター弾を積んだ弾道ミサイルが到来し、テルアビブをはじめ、イスラエル各地の街を火の海にし、アメリカ軍基地をホストする周辺のアラブ諸国に対する攻撃を再開して、“戦争”は拡大の一途を辿る状況といえます。
アラブ諸国は、一旦はイランからの謝罪を受け入れ、攻撃中止を条件にイランへの威嚇を止めていましたが、ここにきて「堪忍袋の緒が切れた」(サウジアラビアのファエサル外相)と、イランに対する軍事的な報復も辞さない動きが出てきています。
特にアラブ諸国やイランにとって生命線ともいえる海水淡水化施設への攻撃(byイスラエルおよびイラン)は、中東諸国にとっての我慢の限界を通り越し、このままだと大戦争に発展しかねない大変危険な状態が続いています。
一向に戦争が収まる気配が感じられない中、アメリカとイランの間では“幕引き”を巡る協議の可能性が追求されています。
トランプ大統領が「イラン当局と協議をしている」、「核兵器を持たないことを受け入れるようだ」と、“話し合いによる解決”を模索するような発言をしたかと思えば、イランの当局は「アメリカ側と協議が行われているという事実はなく、またどのような提案も受け取っていない」と全否定し、“協議”というチャンネルでも真っ向から対立し、紛争終結に向けた糸口が無いように見えます。
どちら側の言い分も100%正しいとは言えず、自らの面子を守るための誇張が散りばめられ、体制維持のためのギリギリの駆け引きが行われているというのが事実であると考えています。
話し合いのための種やチャンネルはあるものの、その活用をダメにしているのが、トランプ大統領によるウィトコフ特使と娘婿のジャレッド・クシュナー氏への過剰な信頼と、イスラエルからの執拗な横やりの存在です。
ウィトコフ特使とクシュナー氏は、イランのアラグチ外相をはじめとするイラン代表団と2月25日・26日にジュネーブで協議し、2月28日にアメリカとイスラエルによるイランへの攻撃が実行される直前の2月26日(25日)にジュネーブで、次の週にも次の協議の設定をして「交渉を通じた問題解決・手打ち」を約束していたにも関わらず、その2日後にアメリカがイスラエルと共に大規模な攻撃とアリー・ハメネイ師の殺害が実行されたことに対して、イラン側は激怒し、「両氏は全く信用できない」と非難し、アメリカが両氏を協議の窓口にする限りは一切の話し合いには応じないと話しているため、実際のところ、これまで実質的な協議は行われていません(イラン側は「両氏はイランから妥協を引き出そうとしながら、我々を騙し、そしてレッドラインであるイランへの攻撃と最高指導者たちの殺害という暴挙を引き出した。おまけに両氏はともにユダヤ人であり、イスラエルの僕であるため、アメリカという皮を被ったイスラエルのエージェントであることが明らかであり、全く信用できない」とこき下ろしています。絶望的な状況といえます)。
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