「出口なき戦争」が招く世界的危機と中国の台頭
そして、今回のイラン情勢を巡るアメリカの思惑違いは、中国を利することにも繋がっています。
ホルムズ海峡の封鎖を受けて、世界最大の原油輸入国である中国は大打撃を受けることになりましたが、ロシアからの調達が可能なため危機的な状況には至ることはなさそうな情勢です。
そして、何よりも、アメリカによるアジア太平洋地域でのプレゼンスが格段に減少し、アジア太平洋地域のアメリカの同盟国を防衛するための部隊・兵力・装備(THAADなど)が中東に移転されていることで守りが弱まり、その結果、アジア太平洋地域における制空・制海権を中国が拡げることに繋がっているとの分析が上がってきています。
実際にアジア太平洋地域におけるアメリカ軍によるパトロールはこの2週間ほどで通常の3割減となっており、中ロが他国の領空で侵犯行為を行って、我が物顔で行動しているのも事実です。
イラン攻撃までかろうじて保たれていた世界におけるアメリカの軍事的なプレゼンスとバランスは、2月28日以降、日に日に崩れ、国際安全保障上の懸念が拡大していると思われます。
軍事的なハードコアな安全保障の揺らぎはもちろん、エネルギー危機、食糧安全保障、流通の危機、中東地域における水の安全保障(イスラエルおよびイランによる海水淡水化プラントへの攻撃による危機的な状況)、公衆衛生上のクライシスなどが多重的に重なるソフトコアな安全保障も大きく揺らぎ、世界的な危機に繋がってくる状況が顕著になってきています。
アメリカとイランが互いに条件を突き付けつつ、協議の機会を探っているとのニュースが入ってきていますが、戦争をフルに行いながら話し合いをするという離れ業がこれまでにうまくいった試しがなく、出口を模索し、安定をもたらすためには、一旦、戦いの手を休め、対話による(交渉による)解決策の模索が必須なのですが、戦争を止める気が全くないイスラエルが当事者であり、ある意味、アメリカの意思さえも支配している現状においては、実のある話し合いが行われ、何らかの合意が生まれる見込みは低く、この戦争は互いの国内向けのプライドのぶつかり合いと、国際社会に向けてのアピール合戦の結果、長引くことが予想され、世界の国々の日常にも大きな影を落とし続けることになるものと考えます。
複数の水面下での話し合い(協議)は実際に行われていますが、それらの間での連携は図られておらず、多種多様な利害が持ち込まれて、非常に状況が複雑なものになってきていることは、日々私が調停努力の現場で感じている懸念材料です。
そうはいいつつも、私たちが気づかないところで“いいサプライズ”が起きて、この行き詰まりに終止符が打たれ、世界に広がる混乱が一日も早く収まるマジックを期待してしまいたくなります。
今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年3月27日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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