アメリカとイスラエルが引き起こしたイラン戦争の思わぬ長期化で、混迷を極める中東情勢。ホルムズ海峡の閉鎖で、世界経済はこれまでにないパニックに見舞われる事態となっています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、そんな中で行われたトランプ氏の演説内容に着目し、大統領の「本心」を推察。さらにこの戦争が結果的に中国とロシアを利する結果となった構造を解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:崩壊が止まらないアメリカの覇権と、トランプの思い付きに振り回され危機が高まる国際情勢
止まらないアメリカ覇権の崩壊。トランプの気まぐれが国際社会に与える危機的状況
「アメリカ国民は本当にイランに対する戦争を望み、何か得ることはあるのだろうか?」
「この戦争はアメリカ国民の利益に資するものなのか?」
イランのペゼシュキアン大統領がアメリカ国民に向けて発出した書簡が訴えかけた、シンプルでありつつ、的を射た疑問です。
2月28日にアメリカとイスラエルが始めた対イラン戦争は、開始から1か月以上が経ちましたが、当初、トランプ大統領が意図していたHit & Go(攻撃して、早期に立ち去る)という“ベネズエラ式”の結果にはならず、イランによる対イスラエルそしてアメリカ軍に対する報復に留まらず、親米とされ、自国内に米軍基地をホストする周辺諸国およびヨルダンへの攻撃に発展し、そこにホルムズ海峡の封鎖による世界経済とアメリカに与するアラブ産油国の生命線をも握って“アメリカとイスラエルの愚”を世界に示す形にまで発展しました。
毎年2月にトルコ・イスタンブールで開催されている武器Expoでも発表されたことがないような最新型の弾道ミサイルがイランによって用いられ、テルアビブをはじめとするイスラエルの主要都市に容赦なく降り注ぎ、これまでにない大きな被害をイスラエルにもたらしています。
それは同時に、イスラエルが絶対的な自信を誇ってきたアイアンドームの限界を露呈し、イスラエルに迎撃ミサイルを消費させることで、親イランのヒズボラ(レバノン)やフーシー派(イエメン)からのミサイル攻撃に対する脆弱性も増しており、イスラエルの思惑も外れてきています。
そのような中、ネタニエフ首相は自身の政治生命の延命という最大の目的に加え、イスラエルがずっと抱えてきた周辺アラブ諸国への生存上の危機を排し、加えて大イスラエル主義の実現という“民族の目標”の実現のために、何があってもイランへの攻撃を止めることは考えられず、それはガザへの蛮行やヒズボラ掃討を看板に行うレバノンへの領土的拡大、パレスチナの壊滅に向けた“ユダヤ人入植の拡大”、シリアに対するコントロールの掌握に向けた軍事攻撃にも当てはまるため、イスラエルが絡む紛争は終わる兆しが見えません(これについては、Multilateral Mediation Initiativeの専門家によると「イスラエルが何らかの形で滅亡しない限りは」というBig Ifがついていることを追記したいと思います)。
しかし、アメリカについては少し事情が変わってきているように見えます。結論から申し上げるとすれば、【トランプ大統領は急速にイラン情勢に対する関心を失い、一刻も早くイランから離れ、“ほかのこと”に注力したいと考え始めている】と思われます。
それがはっきりしたのが4月1日米国東部時間21時(日本時間は4月2日午前10時)に行われたトランプ大統領によるアメリカ国民向けの演説内容です。
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