トランプの思いつきとネタニヤフの暴走で世界が大混乱。プーチンと習近平が“棚ぼた”を得たイラン戦争の現実

 

トランプがイラン戦争から興味を失い始めた何よりの理由

例えば、自身の岩盤支持層であるMAGA派内で高まる「トランプ大統領はアメリカ・ファーストを捨て、これまで非難してきた過去の大統領たちのように、海外の戦争に尽力することは許さない」という意図に応えるべく、「近く戦争は終わる」と述べたり、「アメリカの地上軍がイランの地に派遣されることはない」と言ってみたりしています。

しかし、その半面、特殊部隊である第82空挺師団が派遣され、近く1万人単位での増派命令もすでに発出され、「アメリカがイランの地上作戦を強行するのではないか」との憶測を呼ぶような言動を繰り返しています。

見方をあえて変えるならば、実際に何を考えているのか分からなくすることで、実際の行動の効果を最大化するという戦略なのかもしれませんが、もし今回のイランへの侵攻の真の目的が、イランの体制転換であるならば、いくら最新鋭の爆撃機や弾道ミサイルを多用してみても、地上軍の派遣によるイラン国内の制圧と掌握無くしては、その実現は不可能なため、実際にどうするのか、だれも分からないまま、ズルズルと攻撃が繰り返される間に、アメリカ軍内にも混乱が広がるだけでなく、確実に犠牲も拡大するという悪循環に陥る羽目になっています。

MAGA派の最新の世論調査によると、トランプ氏に早く対イラン戦争を完遂してもらい、国内の諸問題に集中してほしいとの願いから、その実現のための地上軍派遣はやむを得ないという意見が高まっているとのことですが、それもあくまで、イランとの戦争というよりは、MAGA派への約束を果たすことにフォーカスされた要望と理解できます。

そして何よりもトランプ大統領がこのところイランから関心を失い始め、一刻も早い出口を模索している理由が、まるでネタニエフ首相と同じですが、自身の政治的なレガシーと保身です。

すでに政権の支持率は下降線を辿っており、このままだと高止まりするガソリン価格にも押され、上下院で過半数を割り込み、その結果、レームダック状態に陥ることが予測されています。

そうなった場合、通常の政権であれば懸念事項は「大統領は何一つやりたいことをさせてもらえない」という政治的な停滞ですが、トランプ大統領の場合、すでに出てきている罷免と訴追の可能性が現実のものになりかねないという懸念が存在するようです。

もし両院を失った場合、まず下院でトランプ大統領に対する弾劾決議が可決され、上院においてはアメリカ合衆国憲法修正第25条の規定に基づく罷免動議が採択され、任期半ばで大統領職を追われるだけでなく、失職した暁には、一旦、休眠状態にある多数の訴追案件が再起動されて、有罪判決を受ける可能性が一気に高まることが予想されています。

そうなると、これまで築き上げてきたものは一瞬にして崩れるだけでなく、メンツは丸つぶれで、レガシーどころではありませんが、今、トランプ大統領をその窮地から救い出す奇策はないのが現状かと考えます。

イラン情勢・紛争から手を退き、他の案件で“成果”を導き出すことで、何とか支持率を改善させたいというのが狙いかと思いますが、果たしてイスラエルのネタニエフ首相がそれをさせてくれるかは分かりませんし、何よりもイランが停戦する気がなく、これまで長年にわたって繰り広げられてきた“アメリカによるイランへの攻撃の仇討ちの絶好の機会”と考えている節があることからも、期待薄かなと感じます。

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