トランプの思いつきとネタニヤフの暴走で世界が大混乱。プーチンと習近平が“棚ぼた”を得たイラン戦争の現実

 

アメリカのみならず世界を圧倒しているイランの戦略

トランプ大統領が攻撃当初に挙げた【イランの核兵器能力の排除】を確実なものにし、侵攻を正当化するためには、上記の実現が不可欠だと考えますが、それがいかにmission impossibleかは容易に想像できるかと思います。

ただ、トランプ大統領の場合、勝手な推測であることは断っておきますが、中長期的な成果には恐らく関心がないため、成果を強調するためにより現実的な選択肢があるとすれば、イランの原油搬出のターミナルとなっているカーグ島の占拠を、特殊部隊による特別作戦で行い、“ホルムズ海峡を取り戻す”ことかと考えますが、イラン側はそれを予測してすでにカーグ島の守りを固めているとされており、こちらも実現にかなりの混乱と困難が予想されます。

まだ対応を決めきれず、出口も確保できない中、アメリカは迷走していますが、それに対してイランはどうでしょうか?

ガリバフ議長や革命防衛隊のハードライナーが実権を握りつつ、ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相という柔軟な対応を選択しそうな雰囲気をもつリーダーを時折出しつつ、消息不明のモジタバ・ハメネイ師の最高指導者としての権威を上手に用いて、体制維持のための戦略を着々と実行しています。

その中で特に注力されているのが【非当事国をいかに味方に付けるか】という作戦であり、ホルムズ海峡を一旦閉鎖した上で、国の立場によってアクセスの度合いを差別化して、分断を図る作戦を実行しています。

親米国に対しては一切のアクセスを禁じる中、中・ロ・パキスタンなどにはフルアクセスをgrantし、日本のように要求を呑んで(中国元での通行料支払い)かつ元々友好的な関係にある国には、徐々に通航を許すという差異化を図って、分断を加速させています。

強大かつ優秀な軍事力と、ホルムズ海峡という戦略的な拠点を掌握して、それを武器として用いることができる戦略が、アメリカ、そして世界を圧倒していると言えるでしょう。

その分断・差別化はアラブ諸国に対しても同じです。最も親米的で、かつ“アブラハム合意”を通じてイスラエルとの経済的な関係を強化するUAEに対しては、“アメリカの手先”とレッテルを貼って米軍基地のみならず、ホテル、空港、エネルギー施設などに容赦ない攻撃を加え、UAE経済に大打撃を与えることで思い知らせる作戦を取っています。

しかし、アメリカとの仲介を行ってくれたオマーンについては、散発的な攻撃は行ったか、またはイスラエルがイランに見せかけた偽の攻撃を行ったことはあるものの、攻撃を抑制して差異化を図っています。

特にオマーンについては、今、イランがコントロールしているホルムズ海峡の制御を行うことができる国と見なしているため、非常に慎重に対応しているようです。

また、ハマスとイスラエルの仲介を行ってきたカタールについても、オマーンに比べると攻撃の度合いは高いものの、クリティカルな攻撃は実施せず、時折、決断を迫るかのようにミサイルを撃っているという、抑制的な対応で、かつカタール曰く、事前に通告の上、攻撃してくるのだそうです。

アラブの盟主サウジアラビア王国については、中国による仲介で外交関係を修復したばかりという現実に鑑み、サウジアラビア王国がアメリカ軍の基地使用を認め、攻撃を止めなかったことに対する不満を表明するための攻撃は行いつつ、対話のチャンネルはキープし、アラブの姿勢を左右できるcasting voteを握る国として尊重しているようです。

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