トランプの思いつきとネタニヤフの暴走で世界が大混乱。プーチンと習近平が“棚ぼた”を得たイラン戦争の現実

 

国際交渉人が「実行されないもの」と信じたい最悪シナリオ

ではそのどのようなシナリオが考えられるでしょうか?

一つ目は【アメリカがホルムズ海峡の解放なしに、一方的に勝利宣言を行って撤退する】シナリオです。

このシナリオにおいては、演説でも繰り返されたように、ホルムズ海峡の問題は、ホルムズ海峡に依存する欧州各国や日本、中国、韓国が自ら解決すべきという、同盟国を馬鹿にしたような内容で、自らの尻拭いをさせようという非常に都合のいい内容です。

ただ、これに対してはさすがのアメリカのメディアも【無責任はなはなだしく、アメリカを世界の恥に晒している】(ワシントンポスト・ニューヨークタイムズなど)と非難し、アラブの産油国で構成されているGCC(湾岸協力理事会)の6か国(サウジアラビア王国、UAE、バーレーン、オマーン、クウェート、カタール)に加え、巻き添えを食らっているヨルダンも「そんな勝手な話は断じて許さない」と非難を強め、UAEを除いては、アメリカ軍機の領内からの発進および領空の通過を許可しない姿勢を打ち出し、かつ、これまでに締結してきたアメリカとの投資案件も白紙に戻すとの意思表明も行い、抗議しています。

さらには、これは恐らくトランプ大統領にはショッキングな内容と思われますが、サウジアラビア王国のMBS皇太子が「今後、サウジアラビア王国は米国からの武器調達・購入は行わない」という意思を伝達したことも伝わってきており、アラブ諸国の対アメリカ・対イスラエルの憤慨の度合いが分かります。

二つ目は【イランへの地上部隊の派兵と地上戦の実施】という選択肢ですが、これは予測不可能とされるトランプ大統領の思考パターンから考えると、かなり実施の可能性は低いと考えます。

ただ、もし自身の保身に目がくらむか、またネタニエフ首相の口車にのせられるかした場合、実行を決断する可能性はゼロとは言えませんが、仮に地上戦に突入した場合には、恐らくアメリカが戦後経験したどの戦争よりも(ベトナム、イラクなど)苦戦を強いられ、確実に戦争が泥沼化し、アメリカが中東の地に縛り付けられる可能性が高まります。

その結果、他地域におけるアメリカのプレゼンスは格段に低下し、世界的な覇権の確立と回復を狙ってきた外交戦略が頓挫することとなり、そこに中国、ロシアのみならず、インドやブラジルといった地域大国が台頭し、またトルコのように地政学上、非常に戦略的な位置にある国が大きな影響力を持ち、群雄割拠の時代が訪れ、アメリカの影が薄れる事態が予想されます。

ゆえにこのシナリオは、100%否定できないものの、実行されないものと信じたい内容です。

三つ目は【イランへの特殊部隊の派遣と特別任務の実施という限定的な介入】です。

これは陸軍第82空挺師団やグリーンベレーなどの特殊部隊を投入し、イランが各地に隠していると言われている濃縮ウランを奪取して、半強制的に核能力を削ぎ、非核化するという作戦を指します。

ただベネズエラのケースとは大きく違い、イランは隣国イラクとも比較にならないほど、地形に凹凸があり、山岳地帯もあるため、明らかにイラン側に地の利があり、戦闘は非常に対応に苦慮することが容易に予測できますし、イランの100万人ともいわれる兵力を相手に、どこまで最新鋭の武器装備を持ち、特殊訓練を受けている精鋭が対応できるかは未知数です。

そして、いろいろと衛星で監視はしているでしょうが、バンカーバスターをもってしても破壊し尽くせなかった核関連施設および濃縮ウランの貯蔵施設を見つけ出し、アメリカ側の被害を最小限に止めるという大きな命題を確実にこなしつつ、片っ端から破壊するか、奪取することは、イランの能力に鑑みた場合、実質的に不可能か限りなく困難だと考えます。

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