一方的な勝利宣言で戦争から手を退きたいというトランプの願望
「どのようなことを言うのだろうか?」
「イラン情勢の終息に向けた具体的な道筋が示されるのではないか?」
いろいろな憶測が飛び、アメリカの主要メディアはもちろん、各国のメディアも中継・生放送でカバーするほどの期待の現れでしたが、約20分の演説の内容はこれまで発信してきたことのまとめに過ぎないとの印象で、米国メディアでさえ、「正直期待はずれで、見せかけの勝利宣言に過ぎないとの印象で、解決に向けた具体的な内容は皆無だった」(ABCニュース)、「現実を見ず、自らの偽りの成果を飾り立てるだけの妄言に満ちた演説だった」(CNN)など、非常に失望感が溢れる内容だったようです。
それに加え、Stone Ageの話になったり、イランにおける破壊行為をジョークのように話したりする姿勢に嫌悪感を抱いたニュースも多かったとの印象を受けました。
当のイランは全くこの演説に対しては反応を示さず、終結に向けて示されたタイムラインについても、“イランの指導部が壊滅した”という内容についても一切コメントしていませんが、ペゼシュキアン大統領が欧州の指導者(コスタ欧州理事会議長・大統領)に語った内容によると「イランに対する攻撃が未来永劫行われないとの確約を得ることができ、かつアメリカとイスラエルによって被った被害に対する弁済・賠償が行われるとの合意が成立するならば、イランは停戦または戦闘停止に応じる用意がある」と発言しているものの、それはイランの指導部の総意とは考えづらく、またペゼシュキアン大統領が掲げた条件も、アメリカおよびイスラエルにとっては受け入れ不可能なものであることから、戦闘はしばらくの間、続くものと考えるのが筋かと思います。
そのような中で行われたトランプ大統領の自画自賛演説を解きほぐすと、次のような内容が見えてきます。
一つ目は【ホルムズ海峡の封鎖を解くことを諦めて、一方的に勝利宣言をしてこの戦争から手を退きたいという願望の現れ】です。
これまで連日イランに対する攻撃を加えてきましたが、イランの革命防衛隊によるホルムズ海峡の封鎖は機能しており、親米国に対しては通航を許さず、命令に違反した場合には攻撃する構えがキープされたままです。
そしてトランプ大統領が一度は約束したはずの米海軍による同盟国タンカーの護衛も行われず、同盟国とされた国々は、次々とイラン政府との交渉に臨み、ホルムズ海峡の通航税を払ってでも、自国のタンカーの通過を働きかける動きに出たことで、対イラン包囲網の解れが出てきています。
我が国日本も、イラン政府からの【通行料を中国元で支払うように】との条件を呑んで、タンカーの通過を勝ち取っており、この点では“イランの作戦勝ち”と言え、またその背後に構える中国の戦略勝ちともいえると考えます。
NATO諸国も同盟国も自身の言うことを聞かないことに業を煮やしているのか、今回の演説では「アメリカはホルムズ海峡経由の原油にほとんど依存していないためコストはゼロだが、ホルムズ海峡経由の原油に依存している国々は、まずアメリカから原油を購入すべきだ。もしそれが嫌なら、自国の艦船を派遣して自国のタンカーを護衛し、ホルムズ海峡経由で原油を確保するべきだ」と不満を表明していますが、これが意味することは、「アメリカはホルムズ海峡の解放には関わらない」という意思表明であり、これは“ホルムズ海峡の状況を放置したまま、一方的に勝利宣言をし、アメリカは停戦する”という意図の表明と分析することが出来ます。
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