日本のみならず海外のファンたちにも衝撃を与えた、漫画家・まつもと泉先生の訃報。「週刊少年ジャンプ」に1980年代に連載され人気を博した代表作『きまぐれオレンジ☆ロード』は、なぜ当時の読者たちの心を掴んで離さなかったのでしょうか。今回の無料メルマガ『幸せなセレブになる恋愛成功変身術』では著者で同作品の大ファンでもあるマキトさんが、その真の魅力を考察しています。
永遠の夏
『きまぐれオレンジ☆ロード』の原作者であるまつもと泉先生が亡くなっていたことが、公式サイトで発表されました。61歳の若さでした。脳脊髄液減少症や心房細動の持病と戦い続け、最期は入院中に眠りながら安らかに息を引き取ったそうです。
僕は『オレンジロード』の単行本は愛読用と保存用の2セットそろえているほどのファンなので、突然の訃報に言葉にならないほどのショックを受けています。マキトの原点そのものが『オレンジロード』にあると言い切っても過言ではありません
『オレンジロード』は週刊少年ジャンプで連載されていた、エスパー少年・春日恭介を主人公としたSFラブコメディです。恭介は転校先で不良少女の鮎川まどかに恋をしますが、まどかの妹分・ひかるに熱烈なアプローチを受け、優柔不断な性格が災いしてそのままひかると付き合うことになります。ひかるには秘密のまま恭介とまどかが友達以上・恋人未満の関係を育んでいく…、というストーリーです。
大人の論理でいえば、恭介はひかるにハッキリ別れを告げてまどかを選ぶべきです。しかし恭介にその決断力はなく、まどか自身もそれを望みません。
物語は一応、恭介の視点から描かれていますが、まどかの視点に立つと、思春期の永遠の悩み「恋と友情の両立」がオレンジロードの裏テーマであることに気づかされます。
その意味でこの作品は単なるラブコメではなく、「時代を超越した青春文学」と位置づけることができます。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』や夏目漱石の『こゝろ』といった歴史的文学の系譜に連なる正統派の傑作なのです。それだけの奥深さがなければ80年代のジャンプ黄金時代に、3年間も連載を維持することはできなかったでしょう。
『オレンジロード』と言ったら一般的にはヒロイン鮎川まどかのイメージが強いと思います。ツンデレヒロインの元祖とされ、頭脳明晰でケンカも強く才色兼備の美少女です。彼女こそ史上最高のアニメヒロインと考える人も多いでしょう。
しかしまどかの魅力はそのスペック以上に、心の純粋さにあります。まどかはひかると恭介の双方を傷つけないため、自ら影の存在に甘んじます。同時代のアニメヒロイン『タッチ』の浅倉南や『うる星やつら』のラムなど陽性のヒロインとは完全に一線を画しています。
人は誰もが鮎川まどかのように純粋であり続けるため、徹底して悩むべきなのです。
まだ読んだことのない人には、ぜひ『きまぐれオレンジ☆ロード』を一読されることをお勧めします。女子目線のほうが、作品の真価を理解しやすいはずです。
さようなら まつもと泉先生
僕らは 鮎川まどかや春日恭介と共に駆け抜けた
永遠の夏を
決して忘れないでしょう
image by: MAG2 NEWS編集部