AI全盛時代の「せめて、人間らしく」もう創造性は豊かな人生を保証しない

 

 失敗、病気、遊び、犯罪

大量生産品の大量消費といったレベルで必要な「創造性」はAIに取って代わられるとしても、人間には、まだ、レーニンの「前衛党」のような創造的「種子」を生み出す楽しみは残されているのではないでしょうか。

そうした意味では、機械に真似のできない創造性を求める人たちは、少数派を目指す必要があるのかもしれません。

それだけでなく、18世紀以来続いている産業社会の諸価値、「合理性」や「生産性」、「効率」や「科学主義」、いわゆる「グローバリズム」や「唯物論」

などから自由であることが求められます。こうした価値に囚われないことです。

ただし、当然と言えば当然なのですが、こうした、現代の「常識」を支えている諸々の価値から自由になることには危険が伴います。

なぜなら、そうすることは善良な多数派の市民が大切にしている様々な価値を否定しているとみなされるからです。

これはどうしてもトラブルの素になりますから、少数の同志?!の間でだけ情報共有するように注意を払うべきでしょう。

その上で、創造の種子が潜んでいるかもしれない人間の営みについて研究し、考察してみましょう。それらは、常識的には価値がないと思われているものばかりです。

たとえば「失敗」。常識的には「成功」に価値が置かれ、失敗は少ないほど良いと思われているわけですが、それは、高度にプログラム化された段取りの良すぎる教育システムが、失敗を極小化することで成功体験を得させることに尽力した成果でもあります。

しかし、本物の創造的な成功の陰には、膨大な数の失敗が積み重ねられているのであり、自然な状況では、失敗無しに成功体験が得られるなどということはありません。

失敗には創造の種子が潜在しているのです。

たとえば「病気」。常識以前に、動物的なレベルで、誰しもが「健康」を求めます。それが間違っているわけではないのですが、一方で、「病気」を生きることもまた個人の人生であり、「現実」なのです。

自分自身が抱える病気というダークサイドに向き合った時、そこに創造的で個性的な生き様が生まれ出るのです。それは様々な「障害」においても同じです。

実際、心理学や精神医学は、これまで、各種の精神病や神経症、依存症などと向き合うことで、人間の精神というものを深く理解することができました。同じことが個人レベルでもできるはずです。

病気や狂気にも意味があり、創造の種子が潜在しているのです。

たとえば「遊び」。ここで言う遊びは子供の発達にとって必要な遊びでも、良識ある市民が労働による疲労からリクリエーションをするための、お行儀の良い遊びでもありません。

クソの役にも立たない、「もういい加減にしたら」と注意されるような、不道徳感満載の「遊び」です。これには、ギャンブルのような依存症的なものも含まれます。

合理的な存在理由が見当たらない。社会に貢献するわけでもない。本人が遊びたがっているというだけのどうしようもない蕩尽(とうじん)的な「遊び」というのが理想的です。

創造の種子が潜んでいることは確かなのですが、見つけるのには苦労しそうです。

たとえば「犯罪」。もちろん、犯罪を奨励するつもりはありません。しかし、犯罪が発生する背景には必ず社会の歪みや犯罪者の抱える精神的な問題(その多くが生育環境に原因を持つ)が潜んでいます。

ですから、いくら刑罰を重くしても犯罪は減らないのです。

そして、犯罪は、良識的な市民社会のシャドー(影:達成されなかった可能性)でもあります。

ということは、犯罪は、多くの善良な市民の心の底に潜む、不安や怒り、ルサンチマン(恨み)などが顕在化したものでもあるのです。

犯罪の深層にも、創造の種子は潜んでいるはずです。

これらは、ほんの一例です。

現代社会に適応するための色眼鏡を外せば、あなたがフリーク(マニア)になれるものは意外に簡単にみつかるはずです。

常識的な価値判断からすれば、無価値に見えるもので、それでも貴方が興味をそそられるものは、実は身の回りにたくさんあるはずです。周囲に見当たらなければ、時間を遡っても良いでしょう。

そして、こんなバカバカしいことに夢中になれるのは、貴方が「人間」だからです。

image by: Shutterstock.com

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