去る9月、家電量販店のビックカメラがこれまで以上にプライベートブランド(PB)に注力していくとして話題になりました。以前にも「店内にQRコード600枚?新店舗「ビックカメラドットコム」の狙い」、「なぜ老舗の日本橋三越がビックカメラをテナントに入れたのか?」など、ビックカメラの取り組みに注目しているメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』著者の理央周さんが、今回のプライベートブランド戦略を詳しく解説します。
「マーケッターの発想力」~ビックカメラのPB戦略
家電量販店大手のビックカメラが、プライベートブランド(PB)に本格参入するということです。ビックカメラは、家電量販店の中でも面白いことをする企業だといつも思っていました。新宿にあるユニクロとのコラボ店舗のビックロにはよくいきますが、欲しいものが一度で揃うのでとても便利です。
また、以前も紹介しましたが、日本橋三越の中にできたビックカメラは、ビックロとは逆に富裕層向けの品揃えで御用聞きサービスまであるという形でした。
このように、場所や顧客層によって、いろいろな手を打っている、というイメージですが、そんな中でのプライベートブランドへの参入というニュースがあり、とても気になったのです。
今の段階での商品は、キッチン家電、カメラ・AV、トラベルグッズ、美容健康関連のラインアップです。各商品を見てみると、派手な色などは使われていなくて、色やデザインがとてもシンプルです。価格帯も大半が1万円を切る商品で、電池や電灯などの消耗品もあります。
とはいうものの、そもそも家電に関しては、パナソニックや日立といった老舗ブランドがありますし、より安価な日常的な家電品に関しては、アイリスオーヤマなどがニッチな分野で頑張っています。このような市場で、どんな勝算があってビックカメラがPBに参入したのかを考えたいと思います。
PBは、自社オリジナルの製品として、自社で製造し自社で販売するため、有名ブランド品と同じ機能のものよりも低価格で販売できます。さらに、大手が開発販売しない、ニッチな商品を開発することで、ニーズの隙間を狙うことができるというメリットもあります。
また、その中でヒット商品が生まれれば、PBはそこでしか売っていないので、大きな集客力にもなります。私も、バスチーがヒットした時にはローソンにいきましたからね。このようなメリットがあるので、各社が参入し、競争も激しくなります。そこで、どのような特色を出していくのか、が勝負の分かれ目になります。
例えば、ヤマダ電機はここのところ住宅関連に力を入れていて、店内でも大きくスペースをとっていますし、注文住宅を建てる企業を買収したりしています。PBではありませんが、アイリスオーヤマの家電品は「なるほど家電」というテーマで、あったらいいな、という消費者の心をくすぐる商品開発が特徴です。
今回のビックカメラの場合、ホームページに「あなたと共に“暮らす”家電」と大きく書かれています。ページのデザインも、シンプルな部屋の中に、またシンプルな家電が置かれている、という感じでインテリア雑誌のようにおしゃれです。
そして、「お客様の数だけ、暮らしがある。暮らしの数だけ、求められる家電がある。お客様が自分にぴったりな家電を選べるよう、一人ひとりの暮らしや時代に合わせたオリジナル家電を拡充していきます」と説明されているとおり、ここのところの「個」の時代に合わせた、人々の生活に溶け込むような家電、という明確なコンセプトを出しています。
どうしても、これというこだわりを持つ人たちのためのもの、というよりも、「これでいいや」という需要に応える、商品コンセプトのように見えます。
さらにもう一点、特徴なのが乾電池や、照明の電球も低価格でPBとして販売している点です。このような消耗品や低価格の商品があると、リアルもネットショップの方も、お客様の来店頻度が高くなります。そうなると、ついでに買ってくれる商品になったり、ネットショップなどの場合では、逆に後数百円で送料無料になる時に、買ってもらえたりと、売り伸ばしにも貢献します。
家電量販店も、このコロナ禍のことや、ネット通販の台頭などで、独自色を出していかなければならない時代になっていますので、今後このビックカメラのPBがどうなっていくのか、とても楽しみです。
image by:TK Kurikawa / Shutterstock.com