世界のバランサーを目指すべき日本
ここまで駆け足で(でも長々と)いろいろな状況の変化の可能性を描写してみましたが、ではこれらに鑑みて【日本はどう国際情勢の中で立ち位置を見つけるか】についてはどうでしょうか。
「日米同盟が基礎にある対応」という核は不変化と思いますが、「いかに中国との関係も悪化させずに良好に保つか」というポイントも、今後の中国の成長や、すでに深化している経済関係の相互依存性から慎重に見る必要があるでしょう。そして、菅総理がベトナム・インドネシアを最初の訪問先に選び、ASEAN重視をアピールしたこともあり、ASEAN各国とのつながりも大事ですし、ずっとTICADの主催国を務めていることもあり、どのようにアフリカとの連携を図るのかも重要です。
また中東各国とも非常に良好な関係を保ち、“中国と同じく”分け隔てなく友好関係を持つ稀有な国でもあります。以前にもお話ししましたが、日本は外交上、非常にユニークな立ち位置で、上手に振舞うことが出来れば、この混乱の国際情勢下で、頼れるバランサーの地位を確立できると考えます。
トランプ政権が継続しても、バイデン新政権が生まれても、アジア太平洋地域戦略を考えるうえで、アメリカにとって日本はかけがえのない同盟国であることは変化しません。しかし、またすでにトランプ政権下でも表出してきている防衛費問題については、どちらの政権になっても、厳しい対米交渉を迫られそうです。
同時に安倍政権の下、改善した日中関係の状況を保ちつつ、近年、激しさを再度増す尖閣諸島問題を巡る緊張とどう向き合うのかも、今後の国際情勢、特にアジア太平洋地域やインド太平洋地域の情勢を占う上で大きなcasting voteを握ることになり得ます。
現時点では菅政権の日本政府は、強大化する中国の脅威と強硬的な態度に対峙すべく、米豪印そしてASEAN諸国を巻き込んだ対中包囲網の一翼を担っていますが、今後、対中関係も悪化させないように、非常にデリケートなかじ取りが必要になるでしょう。
絶対に避けたいのは米中双方から【どちらの味方なんだ!】という踏み絵を踏まされる状況ですが、そうなるまえにASEAN諸国をはじめとした“日本の友人”をできるだけ多く得て、明確に二分化されるブロック型の国際秩序ではなく、対立はあっても、お互いさまと持ちつ持たれつな関係をベースとした国際秩序作りの中心を担ってもらいたいと期待しています。
非常に長々と書いてしまいましたが、皆さんはどのようにお考えになるでしょうか?ぜひいろいろと意見交換させてください。
国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ
image by: Christos S / Shutterstock.com