オバマの失敗を取り戻す。バイデン当選で高まる軍事衝突の緊張

 

韓国を同盟国とみなしていないアメリカ

三つ目は、【日本を含むアジア戦略はどうなるのか】についてです。これは一つ目の中国との関係も大きな影響を与えますが、どちらが大統領になっても変わらないとすれば、『アメリカの韓国離れ』と『アメリカの安全保障・経済戦略のアジアシフト』です。それが意味することは何でしょうか?

アメリカの安全保障・経済戦略のアジアシフトについては、トランプ政権で軍の再配置を行う上で、駐独米軍を削減し、その分をアジア太平洋地域に再編するというような計画がありますが、実際にはアジアシフトはオバマ政権時からスタートしており、仮にバイデン氏が大統領になった場合でも、アジアシフトの方針は変わることはないと考えます。

特に先述のように、対中関係の悪化と中国の地域における台頭と覇権拡大の動きを受け、中国と真正面から対峙するという方針を取るものと思われます。

トランプ政権下で進められている【自由で開かれたインド太平洋地域】戦略は、仮に民主党政権になっても継承され、日米豪印のクワッドからなる共同安全保障体制の確立が目指されると考えます。またNATOをモデルに、安全保障のみならず、情報、インテリジェンス、経済といった多様な分野での協力も強化され、そこにBrexitでEUから出てきた英国も加わってより強固な“中国包囲網”を形成する方針は、どちらが大統領になっても変化しません。

余談ですが、今週、菅総理が初めての外遊先としてベトナムとインドネシアを選びましたが、まさしくクワッドの核として、両国に、中国からの脅威に対抗するべく【自由で開かれたインド太平洋地域】の旗印に加わるように働きかけを行ったのも、次のアメリカ大統領がどちらになったとしても、この方向性は変わらず、日本も中心的な役割を担うとの決意表明であったと私は理解しています。

アメリカがこだわるもう一つのアジア戦略が【北朝鮮をめぐる動き】です。

トランプ大統領が“演出した”外交上のサプライズNo.1を挙げるとしたら、金正恩氏との直接会談に臨んだということではないでしょうか。

3度にわたって顔合わせしたにもかかわらず、実質的な成果は皆無ですが、北朝鮮を野放しにし続けたオバマ政権への当てつけとしては最高の材料だったように思います。

トランプ政権があと4年継続する場合は、北朝鮮側の出方にもよりますが、もしICBMやSLBMを用いた威嚇を続けるようなことがあれば、トランプ政権としても何かしら軍事的な対応を迫られることになります。

ペンタゴン関係者によると、朝鮮半島への攻撃は可能性の高いオプションとしてリストに残っているそうですが、それが金正恩氏奪首と政権転覆を狙うものなのか、金王朝を活かしておきながらコントロール下に入れるための脅しになるのかは分かりませんが、オプションの選択は、中国の出方にもよるでしょう。

内容については詳説できませんが、米中間(プラスロシア)で水面下でのディールがあるのであれば、大規模な、でも一方的な戦争の可能性もあるでしょう。

では、バイデン氏が大統領になったらどうでしょうか。こちらも、オバマ政権時の失敗を帳消しにするため、就任当初から外交・安全保障上の重要課題に挙げ、比較的短期で(2年くらい)何らかの成果を得ようとすると考えられます(再選をにらむなら)。対話を重視すると表面的には発言するかもしれませんが、オバマ政権時よりも、軍事的な作戦も含めた対応を前に押し出してくることが大いに考えられます。北朝鮮に対する攻撃も、対イランや中国ほどではないですが、議会内ですでにゴーサインが出ているマターですので、状況によっては、トランプ・バイデンの別なく、北朝鮮への攻撃は大いに可能性大です。

そして共通しているのが、【韓国飛ばし】です。韓国・文政権のRed Team入りを確信している両陣営は、すでに2021年以降のアジア戦略に韓国を同盟国としては看做していません。北朝鮮対応や中国対応のために“日米韓の連携が必要”とは一応発言はするでしょうが、トランプ政権の場合は、韓国はアメリカグループには戻ってきませんし、バイデン政権になったとしても期待薄だとの情報が入っています。

そこで日本はどう振舞うのかが大事になりますが、それはまた後程。

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