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菅政権「給付金」打ち切りの非情。老舗企業を待ち受ける倒産地獄

アメリカでは大統領選挙目前、欧州ではコロナの感染が再拡大し、欧米を中心に世界が混沌とする中、我が国ニッポンは景気が徐々に回復しつつあります。次々と新しい試みで「改革」を断行しようとしている菅政権は、今後の日本経済をどのような方向に引っ張ろうとしているのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、コロナ禍の「給付金」打ち切りでで多くの企業の倒産が懸念されるとし、さらに米国の衰退を良いことに中国の脅威が増すとして、日本国民に警戒を呼びかけています。

菅政権「給付金終了」の論理

菅首相は、個別の政策は話すが、日本の課題を整理して、その上での日本の戦略を話さない。ここでは、個別の政策を総括して、日本の戦略を検討する。        

日本の景気は、ウィズコロナでも徐々に戻している。そのため、「持続化給付金」や「雇用調整補助金」などを12月までには終了することになったようだ。

コロナの特性が徐々にわかり、効果的で低負担な感染防止策も見えてきたことにより、その防止策をしている企業は存続できるからである。

落ち込みの激しい業界に向けては、Go Toトラベル、Go Toイート、Go Toイベントなどで企業を応援する方策を打ち、そちらに予算を振り向けようとしている。徐々に感染防止策を打ち、野球や演劇などの観客数を満員まで戻せるようにするともいう。

海外への渡航も、感染数が多くない地域とは徐々に14日間の自粛期間なしで可能になるようだ。このように、感染防止策を講じた上で、経済活動の正常化を進めている。このような施策で経済活動の回復をさせないと、多くの企業の倒産が起こる可能性がある。

この防止策が抵抗なくできたのは、日本が事前に「花粉症」という季節性の疾病でマスクをする習慣ができていたことが幸いしているようだ。欧米では、マスクをすることが政治闘争になっているが、日本では皆が当たり前のようにマスクをしている。というより、日本ではマスクをしないと多くの人に睨まれる。

このように、花粉症という疾病は、神が日本を守るために与えた仕業とも見えてしまう。軽い疫病で、より大きな疫病を防止するという現代の神風が吹いたようだ。

だが、「持続化給付金」や「雇用調整補助金」を止めると、それを頼りにしていた、売上の回復しない企業の倒産や廃業などが、補助金がなくなった時点で急増することになる。そのため、一時的に景気は悪くなる可能性もあるだろう。もう1つ、日本の伝統的な文化を保持していた老舗企業の倒産や廃業が多発することを心配している。

給付終了の論理は、企業に対策する十分な時間を与えたので、その間にウィズコロナに適応できなかった企業の退去は仕方がないということのようである。雇用が求人率1倍以上であるし、海外からの労働力を入れられない現状では、雇用転換はできるとみているようだ。

特に、コロナ下で企業業績が絶好調な物流やECサイト、家需要関係の雇用は好調に推移している。そちらに移ってもらえば良いということのようだ。特に、プログラマーなどが不足することになるので「職業訓練」が必要になるが、そこは国が援助するべきだとは思う。

菅政権では、このコロナ下の時期に過去の実績がある企業より、将来に向かうウィズコロナ社会でも強い企業を伸ばす方向のようだ。

この見解を示すのが、政府の「成長戦略会議」のメンバーに入ったデービッド・アトキンソン氏である。彼が日本の改革を先導するようだ。デジタル化や中小企業の再編などで生産性を高めて、賃金を上げて、個人消費を増やすという。

菅政権が考える「大戦略」の中身とは?中国の脅威に備えよ

菅政権は個々の政策を述べるが、全体的な戦略を語らない。個々の政策を見ると、大体、戦略が透けて見えるようだ。菅首相は、大局を感じてはいるが、言語化ができていない。言語化・戦略化を有識者が行い、それを首相が自らの言葉で語る必要があると思う。

菅政権は、「バイデン政権」の政策や中国の産業育成策を見越して、再生エネルギー政策に転換した。デジタル化と再生エネルギー育成策、地銀や中小企業の再編などが中心になるようだ。しかし、個々の政策の裏には大きな戦略課題が見えている。

世界的なコロナ再拡大などで、今後コロナ不況が一層深刻化する可能性がある。世界でも一番コロナ被害がある米国民の分断が進み、そのため米国の衰退も見通せる状態になっている。しかし、この米国の衰退に日本は確実に巻き込まれることになる。

著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、米国のバラマキで社会主義と同じような状態になり、2027年までには米国の経済的限界に達して、革命が起きるという。一方、2035年までに中国は、世界の覇権をとるべく、経済力・軍事力を増強するという。そうすると、近い将来に米中の力は逆転する可能性がある。

日本は中国近傍にあり、中国という全体主義国家の従属国になりやすい。そのため、日本が真の独立を維持するためには、歴史的にも経済力・軍事力を中国の侵略を許さないレベルまで上げる努力をしてきたし、今の日本は、いつまでも米国を頼ることはできないので、一層努力が必要になっている。その期限は2035年ということになる。

1990年以降、日本は米国との構造協議で研究開発力を大きく削がれた。そのため、国家主導の中国に研究開発力と技術力で抜かされた。しかし、日本の独立を維持するためには、米国との構造協議を棚上げして、国家主導で研究開発力・技術力を再構築していくことが必要になっている。

国家の威信をかけて、中国の侵略を防ぐために軍事力の増強や画期的な製品を作り、経済力を上げる必要があるのだ。デジタル化も再生エネルギーも電気自動車、新兵器も中国からの独立維持には絶対に必要なことだからである。

要するに、日本の大戦略は、米国の衰退を見越して日本が自立して独立を維持することであり、このためには、中国の経済力と軍事力に対峙できるほどの力をつけることである。

この一環として、日本自身が敵対国の外国資本による安全保障上重要な土地の買収に関し、制限を設ける方向で政府が法整備に向けた検討を開始している。

【関連】中国の合法「侵略」に日本政府が対抗、土地購入者の国籍届け出義務化へ

それとともに、軍事研究を禁止する「日本学術会議」の権威をはく奪し、日本の技術を他国に売る技術者や研究者を逮捕していく必要があるのだ。

一方、研究開発力を国家も援助して、再構築していく必要がある。それに、AIなどで労働生産性を上げて、国民の賃金を上げ、日銀の量的緩和政策を止めて、財政的な余裕を作り、国民の生活の質を上げて少子化を止める必要もある。そのためには、デジタル化や再生可能エネルギー、電気自動車、中小企業の再編などもある。

「黙示録の世界に現在は来ている」と、再三再四、このコラムでは述べてきたが、世界の人の多くが実感できる所まで来てしまったような気がする。

特に、米国の有名な市場関係者は、ポピュリズムに陥った米国の未来を危惧しているようだ。

日本も、この状況に対応した戦略を立てて、備える必要が出てきた。安穏とした平和な時代は、とうとう終わりになった。しかし、その状態を無視して、平和を主張する人たちが多すぎるし、それを主張する高齢で頑固な人が多い。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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