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総合的・俯瞰的判断?流行語大賞から消えた安倍政権に批判的な言葉リスト

5日に発表された「ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート30語。今年は新型コロナ関連語が半数近くを占めましたが、昨年現れた「ある傾向」も引き継がれているようです。今回のメルマガ『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、かつてはいくつも選ばれていた「政権に批判的な言葉」を紹介するとともに、それらが消えてしまった理由を推測しています。

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新語・流行語大賞にまで政治介入?

今年も11月に入り「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語が発表された。そして約1カ月後、この候補30語の中から、いろいろな大人の事情によって大賞が選ばれるわけだけど、あたしとしては「どれが大賞に選ばれるか」なんて興味がない。それよりも、この候補30語のほうが興味津々だ。何故かと言うと、テレビのない生活、世の中の流行とはズレまくった生活をしているあたしにとって、毎年この時期に発表される「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語を見て、このうちいくつ知っているかを確認することが、その年の自分の「ガラパゴス度」を知る物差しになるからだ。

ちなみに、去年は30語のうち17語、何とか過半数は知っていたけど、残りの13語はまったく聞いたこともない言葉で、もちろん、意味も分からなかった。ここ数年、あたしはずっとこんな調子で、だいたい半分くらいしか分からない状況が続いて来た。でも、今年はちょっと違う。発表された一覧をザッと見てみたら、知らない言葉はわずかで、大半があたしでも知っている言葉だったのだ。

まずは、今年の候補30語を50音順に挙げてみるので、皆さんも自分がどれくらい知っているか、チェックしながら目を通してみてほしい。すでに発表されてから1週間近くも経っているし、新聞やテレビなどの30語の解説を目にしてしまった人も多いだろうけど、そこはいったん記憶をリセットして、初見でいくつ知っていたか、ザックリと数えてみてほしい。それではどうぞ!

  1. 愛の不時着/第4次韓流ブーム
  2. 新しい生活様式/ニューノーマル
  3. あつ森
  4. アベノマスク
  5. アマビエ
  6. ウーバーイーツ
  7. AI超え
  8. エッセンシャルワーカー
  9. おうち時間/ステイホーム
  10. オンライン◯◯
  11. 顔芸/恩返し
  12. カゴパク
  13. 鬼滅の刃
  14. クラスター
  15. 香水
  16. GoToキャンペーン
  17. 3密(三つの密)
  18. 自粛警察
  19. Zoom映え
  20. 総合的、俯瞰的
  21. ソーシャルディスタンス
  22. ソロキャンプ
  23. テレワーク/ワーケーション
  24. 時を戻そう(ぺこぱ)
  25. NiziU(ニジュー)
  26. 濃厚接触者
  27. BLM(BlackLivesMatter)運動
  28. PCR検査
  29. フワちゃん
  30. まぁねぇ~(ぼる塾)

さて、あなたはいくつ知っていただろうか?あたしは、ナナナナナト!26個も知っていた!こんなこと、ここ数年で初めてのことだ。それは何故かと言うと、今年はヤタラと新型コロナ関連の言葉が多かったからだ。ザッと見ても、2、4、5、8、9、10、14、17、18、21、23、26、28の13個が新型コロナ関連だ。さらには、6の「ウーバーイーツ」も新型コロナによる外出自粛から利用が拡大したわけだし、16の「GoToキャンペーン」は新型コロナ対策だし、19の「Zoom映え」も新型コロナからの派生だ。

22の「ソロキャンプ」にしても、新型コロナ以前からブームは始まっていたけど、新型コロナの「3密」の回避によって一般にも広まった。こうした二次的なものまで含めると、30語のうち半数以上が新型コロナ関連ということになる。いくら世の中の流行とズレまくっているあたしでも、新型コロナ関連の報道はずっと追って来たから、ぜんぶ分かった。ちなみに、あたしが分からなかったのは、12の「カゴパク」、24の「時を戻そう(ぺこぱ)」、25の「NiziU(ニジュー)」、30の「まぁねぇ~(ぼる塾)」の4つだった。

1の『愛の不時着』は、観たことはないけど、一部で人気の出た韓流ドラマだということだけは知っている。3の「あつ森」も、やったことはないけど、一部で人気の出たゲーム『あつまれどうぶつの森』のことだと知っている。11の「顔芸/恩返し」も、観たことはないけど、一部で人気の出たドラマ『半沢直樹』のことだと知っている。13の『鬼滅の刃』も、映画は観てないけど、全国的に人気の出た漫画とアニメのことだと知っている。

15の『香水』は歌のタイトルで、ラジオで聴いた時に「君のドルチェ&ガッバーナ」という部分のメロディーが、ポルノグラフィティの『ミュージック・アワー』の「君が胸を焦がすから」という部分とソックリだな~と思ったので良く記憶している。でも、歌っている瑛人という人は顔を知らない。他には、29の「フワちゃん」は、何をする人なのかは知らないけど、ネットの芸能ニュースで何度が画像を見たので、名前と顔だけは分かる。画像からの印象は「篠原ともえの現代版」という感じだった。

こんな感じなので、いくら「知ってる」と言っても、これらの言葉に関しては、あたしは最低限の認識があるだけで、詳細については分からない。でも「知ってる」か「知らない」かで言えば「知ってる」にカウントしてもいいと思う。だけど、24の「時を戻そう(ぺこぱ)」、25の「NiziU(ニジュー)」、30の「まぁねぇ~(ぼる塾)」に関しては、この1年、ただの一度も聞いたことがない言葉なので、降参してネット検索した。

そしたら、「時を戻そう」と「まぁねぇ~」がお笑いのネタで、「ぺこぱ」と「ぼる塾」というのが、そのネタをやっているお笑い芸人の名前だった。ようするに、何年か前のスギちゃんの「ワイルドだろ」みたいなものだけど、その時もあたしはスギちゃんというお笑い芸人をまったく知らず、何のことだか分からなかった。

そして「NiziU」というのは女性アイドルグループの名前だった。AKBとか何とか坂とかもいっさい知らないあたしにとって、さすがにこれはハードルが高すぎる。
これを言ってもなかなか信用されないんだけど、アイドルというものにまったく興味がないあたしは、ジャニーズのグループでメンバー全員の顔と名前が分かるのは「SMAP」と「TOKIO」だけで、「V6」も「嵐」も1人か2人しか分からない。「V6」はグループ名から6人組だと想像つくけど、「嵐」は何人組なのかも知らない。こんなあたしなので、新しいアイドルグループや最近流行してるお笑い芸人のネタなど分かるわけがない。

それから、12の「カゴパク」に関しては、あたしの若い頃は、人の自転車のカゴに置き忘れてある財布やバッグをパクる(盗む)ことを「カゴパク」と言っていた。だから、一度も聞いたことのない言葉じゃない。でも、そんな犯罪が頻発したなんて報道は耳にしてないので、きっと別の意味として使われた言葉だと推測して「知らない」にカウントした。そしたら、その通りだった。「カゴパク」というのは、レジ袋が有料化されたことで増殖した、買ったものを店内用のカゴのまま待ち帰るフトドキ者のことらしい。

…そんなわけで、今年の候補30語は、ヤタラと新型コロナ関連の言葉に偏っているけど、それにしちゃおかしな点がある。それは、東京都知事の小池百合子が連発した流行語が「ステイホーム」と「クラスター」と「3密」と「ソーシャルディスタンス」しかないことだ。小池百合子と言えば、自分が都知事に再選するために、新型コロナを利用して連日テレビに出まくって、「ロックダウン」だ「オーバーシュート」だ「東京アラート」だ「ステップ3」だ「夜の街関連」だと流行語を連発したのに、どうしてこれらは選ばれなかったのだろうか?

他にも、新型コロナ関連なら「ダイヤモンドプリンセス号」や「水際対策」や「緊急事態宣言」や「飛沫」や「疑陽性」や「特別定額給付金」や星野源の『うちで踊ろう』など、少なくとも8の「エッセンシャルワーカー」より世の中で連呼された言葉がいろいろある。さらに言えば「特別定額給付金」の時に麻生太郎が言った「手を挙げたら10万円」という暴言もある。

また、安倍晋三が全国の学校を休校させた時に言った「断腸の思い」もある。安倍晋三は、2月末に全国の学校を休校させた時だけでなく、6月に横田滋さんが亡くなった時も、8月末に辞任を発表した時も「断腸の思い」と言っていたので、あたしは「ユーキャン新語・流行語大賞」を狙っているのかと思っていた。

新型コロナ以外では、今年はやっぱり杉田水脈の「女性はいくらでも嘘をつける」だろう。それから、安倍晋三が法を無視して「定年延長」した黒田弘務の「賭け麻雀」や「黒田杯」もある。そして、何よりも大きいのが「桜を見る会」だ。「桜を見る会」の追及は、昨年の11月7日に「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語が発表された翌日、11月8日の参院予算委員会で、日本共産党の田村智子議員が口火を切った。そして、とうとう安倍晋三を間接的に辞任に追い込んだのだから、政治部門では今年一番の大問題だったはずだ。

それに続いて、河井克行と河井案里という「令和のバカップル」の「ダブル逮捕」もあった。現在進行形の「日本学術会議」の任命拒否問題から「総合的、俯瞰的」が選ばれているのに、どうして「桜を見る会」を始めとした安倍政権下で起こった問題は1つも選ばれなかったのだろうか?それに「総合的、俯瞰的」が選ばれているのに、どうして「任命拒否」は選ばれなかったのだろうか?さらには、菅義偉と仲良しの松井一郎による「大阪都構想」の「住民投票」による否決、これもスルーされている。

…そんなわけで、これは去年も書いたけど、「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補は、2015年までは「50語」だった。そして、政治に関する言葉がいくつも選ばれていた。たとえば、第2次安倍政権1年目の2013年の候補50語を見てみると「アベノミクス」や「3本の矢」を始め、政治関連の言葉がたくさん並んでいる。それも、批判の的になった「集団的自衛権」や「特定秘密保護法」、安倍晋三が五輪招致のために世界に向けて大嘘をついた「放射能汚染水」や「コントロールされている」、麻生太郎の失言「ナチスの手口に学んだら」、そしてトドメはアベノミクスに批判的な同志社大学の浜矩子教授の造語「アホノミクス」、こんな言葉まで選ばれていたのだ。

翌2014年も「トリクルダウン」「輝く女性」「2025年問題」「集団的自衛権(2年連続ノミネート)」「限定容認」「積極的平和主義」「消滅可能性都市」「壊憲記念日」など、主に安倍政権が強行したトンデモ法案が批判的に取り上げられている。そして、翌2015年になると、「アベ政治を許さない」「I am not ABE」「1億総活躍時代」「I AM KENJI」「上級国民」「下流老人」「粛々と」「存立危機事態」「切れ目のない対応」「駆けつけ警護」「国民の理解が深まっていない」「レッテル貼り」「早く質問しろよ」「テロに屈しない」「自民党、感じ悪いよね」「戦争法案」「とりま、廃案」「マイナンバー」「大阪都構想」「シールズ」「白紙撤回」など、50語のうち20語以上が政治関連で、その大半が安倍政権に批判的なものだった。

でも、2014年5月に「内閣人事局」が設立され、当時の官房長官だった菅義偉が官僚の人事を支配するようになると、各省庁だけでなく、NHKなどの人事までもが政権寄りに変更されるようになった。そして「ユーキャン新語・流行語大賞」も、2015年には「翌年より候補を30語にする」ということが決められた。候補数を50語から30語に減らせば、おのずと政治関連の言葉の数も削らざるを得なくなる。

それでも、「30語」になった翌2016年は、「アスリートファースト」「都民ファースト」「レガシー」「盛り土」など、小池百合子都知事に関する言葉が多かったけど、30語のうち3分の1の11語が政治関連で、安倍政権に関しては「保育園落ちた日本死ね」や、安倍晋三が公約を撤回した時の呆れ果てた言い訳「新しい判断」など、やはり批判的なものが選ばれている。

翌2017年は、「共謀罪」「Jアラート」「人生100年時代」「働き方改革」「プレミアムフライデー」「忖度(そんたく)」「魔の2回生」などが並び、その「魔の2回生」の代表格の豊田真由子の「ちーがーうーだーろー!」も選出されている。小池百合子の「アウフヘーベン」も入れると30語のうち9語が政治関連なので、前年度と同じく約3分の1に当たり、やはり安倍政権に批判的なものが散見される。

こうした流れに明らかな変化が起こったのが、2年前の2018年だった。2014年にはノミネート50語のうち20語以上が政治関連で、その大半が安倍政権に批判的な言葉だった。ノミネートが30語になってからも全体の3分の1が政治関連で、安倍政権に批判的な言葉が複数あったのに、2018年には、突然、政治関連の言葉が「高プロ(高度プロフェッショナル制度)」「首相案件」「ご飯論法」の3語だけに激減されたのだ。それでも、この3語は、すべて安倍政権に批判的な意味で取り上げられていた。

それが、昨年2019年になると、政治関連は「キャッシュレス/ポイント還元」「軽減税率」「ポエム/セクシー発言」「ホワイト国」「れいわ新選組」の5語に増えた一方で、安倍政権に批判的なものが消滅してしまった。さっきも書いたけど「キャッシュレス/ポイント還元」や「軽減税率」を選ぶのなら、どうして「消費税増税」を選ばないのか?「ホワイト国」を選ぶのなら、どうして「元徴用工問題」や「GSOMIA(ジーソミア)」を選ばないのか?そして「対韓強硬政策」を選ばないのか?あたしには、同じカテゴリーの中で、意図的に「安倍政権に批判的にならない言葉」を選んでいるようにしか見えない。

そして、今年2020年の30語でも、安倍政権に批判的な言葉はゼロ。「アベノマスク」だけは選ばれたけど、安倍晋三は最後まで「市販のマスクの価格を下げるなど一定の効果があった」などと言い張っていたので、これは批判的な視点からの選出とは言い切れない。そして、あれほど国会を紛糾させた「桜を見る会」も、河井夫妻の「ダブル逮捕」も、黒田弘務の「定年延長」や「賭け麻雀」も、どこにもない。豊田真由子の「ちーがーうーだーろー!」は選ばれたのに、どうして杉田水脈の「女性はいくらでも嘘をつける」は選ばれないのか?

安倍晋三の今年の失言や暴言だけを見ても、野党議員に対する「意味のない質問だよ」というヤジ、「募ってはいるが募集はしてない」という噴飯物の答弁、「責任を取ればいいというものではない」という呆れ果てた説明など、どれもノミネートに値する迷言だけど、やっぱりどこにもない。2014年には、野党議員に対する「早く質問しろよ」というヤジがノミネートされているのに、どうして今年の「意味のない質問だよ」というヤジはノミネートされないのか?

他にも安倍晋三は、5月25日の新型コロナに関する会見で「わずか1カ月半で今回の流行をほぼ収束させることができました。まさに日本モデルの力を示したと思います」などと言っている。さすがにこれは長すぎるけど「嘘の収束宣言」という言葉を選ぶべきだ。それに「東京五輪延期」もある。安倍晋三は「人類が新型コロナに打ち勝った証として完全な形で開催する」と大見得を切ったのだから、「東京五輪延期」だけでなく、この大見得も候補に挙げるべきだろう。

…そんなわけで、今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語は、あたしが総合的、俯瞰的に判断した結果、あたしは当初の名簿は見ていないが、一部のジャンルに選定が偏っていて、全体のバランスに問題があることが分かった。たぶん、当初の名簿にあった「桜を見る会」「ダブル逮捕」「黒田杯」「嘘の収束宣言」「東京五輪延期」「募ってはいるが募集はしてない」という安倍晋三にとって都合の悪い6つの候補を、どこかの誰かが人事権を振りかざして「任命拒否」したからだろう…なんて空想してみた(笑)。

(『きっこのメルマガ』2020年11月11日号より一部抜粋・文中敬称略)

image by: 首相官邸

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