日本のメディアがほとんど取り上げぬ「22222222222宣言運動」の意義

 

《資料6》福田康夫インタビュー〔要旨〕

(賛同者の1人である福田康夫元首相は、『日本の進路』11月号でインタビューに応じ、「日米同盟で中国を敵にしてはならない」と題して約5ページにわたって熱く語っている。以下要旨を掲載する。)

西原春夫先生はすごい熱意をお持ちですから、この「東アジア不戦」提言の運動を絶対に成功させたい。普段、皆さん、平和を心の中で願っているけれども、口に出して「平和、平和」と言う人は多くはない。そういうことを言わないでも済んだ。それだけ戦後の日本は平和だった。戦争をするような状況もなかったし、しかも日米同盟で「何かあればアメリカが守ってくれる」という安心感もあった。ところが、今後を考えると、日本が置かれている環境が違ってくる。

この1世紀はアメリカが世界をリードし、1990年あたりからは「一極支配」と言われるほどの独走態勢が続いたが、昨今は中国が台頭してきた。だから覇権国家アメリカは危機感を持った。アメリカは今も成長しているが、中国の成長にはかなわない。そして、いずれは大きく遅れを取るかもしれない。そのときにヘゲモニーを失うかもしれない、と。

米中が互いにやり合う姿は当分の間、続くが、そういう状況で平和をどうやって維持していくかを考えることが、いま最も大事だ。問題は、日本はアメリカとは日米同盟関係だが、中国とは同盟関係ではない。だから、米中がケンカをした時に、アメリカに付いて中国を敵にすることになるが、そういうことが許されるのかどうか。

日本は戦争が出来ない国だと私は思う。戦争するほどの軍事力を持たず、周りは核保有国がぐるりと取り囲んでいる。だから、日本は極めて軍事的に弱い国だ。大事なことは、これからも近隣の国々と事を構え、軍拡競争をするような関係にならないようにすることだ。

ただ「米国の軍事力が日本にあるじゃないか」ということがある。あれは「アメリカの持ち物ですよ」では済まない。米軍が日本の領土の中にあれば、周辺の国々は「日本を攻めるんじゃない、米軍を攻めるんだ」となる。彼らから見ると、日本にアメリカの軍事力があるということは即、日本の軍事力と変わらない。そういうことを皆、よく理解しなければならない。

最大の問題は、米中が戦争をするのかどうかだ。戦争しないなら、アメリカの軍事力が日本にたくさんある必要はないということになる。米中の対立が深刻にならないように、むしろ、米中が協力し合えるような道を探るしかない。もしそういう方向に米中が行くのであれば、日本はそれを全面的に応援するのが大事な方策になる。米中関係が緊張状態でなければ、アメリカが軍事力を日本に置く必要性が将来薄くなる。

日中間で何か問題があれば、米軍が応援すると言ってくれる。けれども、日中は仲良くやっている、日韓も日朝もうまくやっているとなれば、アメリカに応援を頼む必要がないだから、外から見てもそう見えるように日ごろからしておかなければいけない。

もちろん、アメリカとはきちんと話し合いをして、日米間の信頼度をさらに高めるよう努力が非通用だ。戦後、長い期間をかけてつくり上げた同盟関係は、これからも世界の平和と安定のために極めて大事な枠組みだから、重要視しなければならない。軍事面だけでなく、経済や環境、新エネルギー開発などに協力の範囲を広げ、次元の高い同盟関係へと磨き上げる努力が必要である。環境やエネルギーなどグローバルな課題にも取り組んでいかねばならない。中国もそこに加わることで、アメリカと共に国際秩序を支えるプレイヤーになることが望ましい。

北東アジアの平和と安定は日本の責任だ、というぐらいの思いで、前向きな交流をやってほしい。平和運動というのは、敵をなくす運動なんですよ。敵がいなければ平和ですよ。そう考えるべきですね。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年11月30日号より一部抜粋・文中敬称略)

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