汚職の温床。カジノ業者と公務員の「IR接触ルール」は再び破られる

 

【サーチ&リサーチ】

《朝日》サイト内の19件で一番古いのは、やはりIR法案に関する以下の記事。

2018年7月18日付
「国内初のカジノ解禁につながる統合型リゾート(IR)実施法案の審議が、参議院で大詰めを迎えている。誘致に積極的な大阪府では、IR事業者のアピール合戦が過熱している。」とする記事中、「接触のルール」「事業者との対応指針」に関する次の記載。

「一方、大阪府と大阪市は、職員とIR事業者の接触時の内規を定めている。IR実施法案が成立すれば、事業者の働きかけがさらに強まることが予想されるため、職員の不正行為を防ぐ目的がある。府と大阪市は昨年4月に共同でIR推進局を設置し、その後、事業者との対応指針を作成した。事業者との面会は庁舎内に限り、職員2人以上で対応することや、個人の携帯電話ではやりとりしないことなどを規定している。」

*今回まとめられた修正案中の「接触ルール」の原型と見られる。

*次の記事はIR法案とは無関係の「接触ルール」についての社説。

2018年9月22日付社説
社説のタイトルは「文科次官辞職 規律と信頼を取り戻せ」。文科省の戸谷一夫事務次官が、業者から不適切な接待を受けていたとして辞職した件で、前川喜平氏に続いて2人の事務次官が不祥事で役所を去ったことを批判する内容。その中で…。

「利害関係者との接触に関するルールを徹底するとともに、行政の公正公平を傷つける問題が潜んでいないか、各部局の業務を再点検する必要がある。」と言うのだが、ここで「利害関係者との接触に関するルール」とされているのは、旧大蔵省の接待汚職などを受けて作られた「国家公務員倫理規程」を指している。

*さらにIRとも文科省とも関係ない、別の「接触ルール」が登場する。

2019年4月9日付
日本学生野球協会が発表した大学、高校の8件の不祥事と処分についての記事中、以下の記述。優秀な中学生の野球部員をスカウトしようとして、高校野球部の監督がルールを破って接触したか?「同3カ月」の「同」は「謹慎」。

「【同3カ月】長野商の監督=2月20日から、中学生との接触ルール違反」。

*さらに、4つ目の「接触ルール」が、以下の記事の中に登場。幼児虐待死事件を巡り、児童相談所の対応の是非が問題となり、通報があったようなケースでどのように「接触」すべきかについて様々な議論がある中、「接触のルール」について次の記載。

「児相では、通告を受けて48時間以内に子どもの安否確認をするため接触するというルールがある。」と言うのだが、記事は、この「ルール」が形式化していて、警察が接触して虐待の事実がないと報告したことによって、結果として児相が虐待を見過ごしたことを批判的に指摘している。

*その後、IR汚職事件を経て、動きが出てくる。

2020年1月22日付
IRの基本方針のなかに、「カジノの許認可にかかわる公務員と事業者との接触ルールを政府が設けるかも焦点に浮上。政府は、利害関係者からの金品受け取りなどを禁じた国家公務員倫理規定や、大臣規範を理由に消極的だったが、官邸幹部からも「新たにルールを設けることはありうる」との声が出ている」と。

*このあと、国会では、汚職事件をきっかけに「接触ルール」の検討が行われ始める。と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大が、政府のIR計画に暗い影を落とし始める。

2020年6月12日付社説
「構想の前提が大きく揺らいでいる。いったん決めたことだからと突き進む愚は避け、立ち止まって考え直すべきだ。新型コロナの感染拡大がカジノ事業者の経営を直撃している。安倍政権はカジノを含む統合型リゾート(IR)の実現を成長戦略の目玉に位置づけてきたが、先行きは極めて危ういと言わざるを得ない」と。

● uttiiの眼

「接触のルール」という言葉も、なかなか奥が深いことが分かる。新自由主義的な政策の特徴の1つは、「政治・行政」と「経済」が曖昧に癒合する点だと思われ、それぞれの境界のところで「汚職」や「倫理に悖る先駆け」「不当な優遇」などが頻発する。倫理のルール化の努力は、形式的にはなされるが、ルールは常に破られ続ける。

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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