西洋風の接し方に慣れていないモロッコの女性に対して、西洋風のやり方で接することは必ずしも心地の良いことではないようです。だから、こんだけやってあげているんだから、みんな感謝して当たり前!という考えだと、それは、“先進国のエゴ”、ということになってしまいます。
但し、モロッコにだって、いつか出世したい、と思う女性もいるはずです。もっと給料が欲しい!もっと平等に扱われたい!と思う女性だってたくさんいるでしょう。
だから、そんな女性たちにとって、この会社で働くことは、他の会社・ひとと比べて給料が高い、安い、ということよりも、チャンスがたくさんある、という点でものすごいモチベーションになっているはずなのです。
当時はまだ、工場長以外の主要なポジションには、ベルギーから、大学を出たばかりの男性を採用していたようです。全員男性だったのは、まだまだ、女性の上司だと抵抗を感じるモロッコ人男性が多いからだそうです。
そして何故、大学卒業後まもない若者だったのかというと、ベルギー人の給料も、モロッコ人に合わせて相当安く設定していたから、だったようです。若い人はお金よりも経験を欲しがっている、ということが分かっていたから、彼らはそれでも優秀な人材が集まることに自信を持っていたんですね。
さらに、ベルギー本社の考えは、安い給料で若者に海外で働いてもらう代わりに、その頃に経験したことをもとに、ある程度の知識・経験を積んだところで、どんどん新しい国での事業に参加させる、ということなのだそうです。
だから、当時、実際にモロッコで会った若者たちは、みな自信に満ち溢れ、笑顔がとても素敵な若者ばかりでした。
一方、モロッコで採用されたモロッコ人の若者にも、自分が望めば、ベルギー人に与えるのと同じ経験が可能なことを約束していました。
で、このベルギー本社の本当にすごいところは、モロッコ人を支配しようなんて考えもないし、モロッコ人を利用して自分たちだけが利益を上げよう、なんて考えもないし、こんだけやってあげているんだから、まさか会社を辞めたりはしないよね!なんて、考えもまったくないっていうところだと思うんです。
この会社のトップのひとたちのプライドは、世界一の冷凍フルーツの企業であること。自社で教育した世界中の人間はどこに行っても活躍できる、と胸を張って言えること。
世界レベルで、一流の会社・一流の人間でいる限り、そして、他の会社では味わえない貴重な経験が積める会社であり続ける限り、そういうチャンスを与えられる会社であり続ける限り、ほんとうに必要な人材は辞めていかないし、たとえこの会社を辞めて巣立っていった優秀な人材も、必ず自分たちにとってプラスな人材となって戻ってくる。彼らにはそういう自信があるんでしょうね。
ほんとうにひとが求めているのは、“平等に給料をもらうこと”ではなくって、“平等にチャンスをもらうこと”なのかもしれませんね。
今週も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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