リーダーに関する言葉
そして、次は「五事」の中の「将」に関する言葉です。孫子には、リーダーに関する言葉が多く出てきます。その一つが
将とは、智、信、仁、勇、厳なり
(始計篇第一)
です。つまり、リーダーは知恵があり聡いこと(智)、他人から信頼されること(信)、人を思いやること(仁)、勇気があること(勇)、落ち着きと厳しさがあること(厳)が必要であると言っています。この五つの資質が全部そろった経営者や指導者ならば、スゴイ人物ですね。大きく成功をした経営者は、そのような人かもしれません。
それはともかく、「智」が第一にあげられています。これは、知識があるということではなく、物事を論理的に考えられたり、有効な戦略を考える力があるということを指しているようです。
そのためには、経営者は普段から勉強をすることが必要ですし、いつも経営について考え続けることが求められます。そのうえで、人望の厚い人間になることが経営者に必要だということでしょう。経営者も大変です。
さて、最後に経営者へのいましめのことばを紹介します。
兵に常勝なく、水に常形なし
(虚実篇第六)
この言葉の意味は、水に決まった形が無いように、軍にもいつも勢いがあるわけではない」ということです。つまり、企業や経営には勢いというものが必要ですが、いつもその勢いが続くというものではありません。調子が良くて、イケイケどんどんで進んでいくと、思わず足元をすくわれることもあります。ですから、経営者は勢いを緩めることも必要だと言っているのです。
業績が伸び続けている企業にとっては、なかなか難しいことかもしれません。しかし、今回のコロナのためにやむなく勢いが止まってしまった企業もあるでしょう。そうした企業は、今が勢いを緩めるときだと思えばいいのです。そして、孫子はそうしたリズムを意図的に作り出すことが必要だと言っています。それが出来る経営者はなかなかいないとは思いますが。
以上「孫子」の中から五つの言葉をピックアップしてみました。孫子には、こうした経営へのヒントが詰まっています。あなたも時間ができたら、読んでみてはいかがでしょう。
■今日のツボ■
- 経営の重要項目は、道、天、地、将、法である
- 「彼」と「己」、「天」と「地」を分析することが重要
- 経営者に必要なのは、智、信、仁、勇、厳である
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