ホンマでっか池田教授が指摘、Qアノン信者と人為的地球温暖化論者の共通点

 

ここから敷衍して、一般に妄想は、扁桃体で感じる情動と、他の脳領域で認識している事実が齟齬を起こして、認識している事実よりも、扁桃体で生じている愛、憎しみ、好悪、願望などの感情を優先して、事実を歪曲して解釈するところから生じると考えられる。

例えば、トランプに勝って欲しい、あるいは民主党は嫌いだという願望が強いと、トランプがボロ負けしたという事実を受け入れられずに、選挙で不正が行われたといった願望に合わせた物語を作って、事実を糊塗しようとするわけだ。民主党が嫌いという感情が嵩じると、DSという物語を作って、「The Storm」により自分たちの願望が実現するに違いないといった妄想が生じることになる。

カプグラ・シンドロームといった個人的な妄想は、他の人にはなかなか理解し難く、本人の周りの人は大変だけれども、社会に大きな影響を与えることはない。しかし、QアノンやDSといった党派的な妄想は、時として厄介な政治問題となって、社会に災難をもたらすことがある。

事実を直視できず、願望に合わせた物語を作って、太平洋戦争に突き進んでボロ負けした昭和10年代後半の大日本帝国の指導層は、ひどい妄想に取り憑かれていたわけだが、恐らく、政府や軍の高官でも真っ当な頭の人はこれが妄想だということに気づいていたに違いない。気づいていても妄想を止められなかったのはなぜか。誤解を恐れずに断言すれば、政治的妄想はポピュリズムと親和性が高いということだ。

ナチスも、太平洋戦争時の日本の軍部もそうだけれど、情報を統制して国民が喜びそうな妄想を垂れ流せば、事実を知らされてない大方の国民は、被害がわが身に及ぶまでは、妄想の情報を信じるようになる。B29が飛んできて爆弾を落とされて、身近な人が犠牲になれば、軍部の流す大本営発表を怪しいと思う人が出てくるけれども、妄想をかたくなに信じてしまうと、やがて神風が吹くとか、神国日本は不滅といった願望が実現されると信じるようになる。Qアノンの信者と選ぶところがない。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

image by:Julian Leshay / Shutterstock.com

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