「中国とは価値観を共有できない」元自衛隊トップの勇気ある発言

kitano20210224
 

自衛隊制服組のトップである統合幕僚長の職にあった河野克俊氏の中国に対する批判が、一部で話題となっています。この批判を「勇気ある発言」と称賛するのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、河野前統幕長の発言が称賛に値する理由を述べるとともに、「日本は戦略的に中国との関係を悪化させるべき」という持論を展開しています。

「中国は…」防衛省前統幕長・河野克俊氏の勇気ある発言

2014年から2019年まで、自衛官のトップである統合幕僚長を務めた河野克俊さん。中国に対し「勇気ある発言」をされました。テレ朝ニュース2月23日。

防衛省の元制服組トップが中国など各国の海軍の軍人が集まる国際セミナーで、海洋進出を強める中国を名指しして「価値観を共有できない」などと痛烈に批判しました。

 

防衛省前統幕長・河野克俊氏:「中国が我々と同じ価値観、すなわち海洋の自由を共有してもらえれば、ともに経済的繁栄を共有することができる。しかし、残念ながら中国の行動は我々と価値観を共有しているとはいえない」

おっしゃる通りですね。中国は1970年代初めまで、「尖閣は我が国領土だ」と主張したことはありませんでした。ところが、国連の調査で、「莫大な石油が眠っている可能性ある」という結果が出た。それで、「それなら、我が国の領土ということにしよう」となった。

「南シナ海は、ほとんど全部中国のもの」とする「九段線」も似たようなものです。何の根拠もなく、「そういうことにしよう」と勝手に決めてしまった。「九段線」について、ハーグの常設仲裁裁判所は2016年7月12日、「法的根拠がなく、国際法に違反する」との判決を出しています。しかし、中国はこれを完全に無視し、あちことで埋めたてを進め、軍事拠点化している。

河野前統幕長は中国が今月1日に海警局に武器使用を認めた海警法を施行したことについて、「世界は海洋の自由の観点から大変、憂慮すべき事態に直面している」と指摘し、「我が国として看過できない」と批判しました。

「海警法」ができたことは何を意味するのでしょうか?

尖閣の周辺に、日本の船がいるとしましょう。すると、中国海警が来て、「あなたたちは【中国】の領海を侵犯しています!いますぐでていきなさい!」と警告される。日本の船が日本の領海にいるのだから、何も問題ないとシカトしていると、海警の船から砲撃される。そんなことが「合法」になったのです。

河野さんは、「対抗策」にも言及しました。

そのうえで、こうした中国の動きに対抗する枠組みとして、日・米・豪・印の連携を拡大していく重要性を訴えました。
(同上)

「自由で開かれたインド太平洋戦略」の核となっているのは日本、アメリカ、インド、オーストラリアです。そして、イギリス、フランス、ドイツがこれに参加する意志を示している。さらに、ASEAN10か国を引き入れたい。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国一強で崩れてしまったアジアの「バランスオブパワー」を回復するために不可欠です。

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