日本政府、グタグタ感の正体。コロナ第4波を招いた「次善の策」は何を間違えたか?

 

ワクチンの確保遅れの問題も良く分かりません。勿論、日本の場合は「下手をすると噴出してしまうアンチワクチン感情のマグマ」という問題と、「絶望的なまでの治験への無理解」という問題があって、厚労省としては半世紀に渡って、この問題と悲惨なまでの「負け戦」をやってきた歴史があるわけです。

ですから、個人的には同情を禁じえない点もあるのですが、それでも、ここまで手配が遅れるという中には、色々なファクターが積み重なった結果「次善の策」としてどうしようもない現実として「こうなった」のでしょう。そのファクターをしっかり公開しないから「グダグダ」という印象が広がるわけです。

例えば、河野ワクチン担当相の任命という問題があるわけです。どうして厚労省は、自分の権益を侵害されかねないにも関わらず、河野大臣の就任を許したのか、そもそも「何か裏がある」と疑ってかかればキリがないわけですが、この点も含めて、国としてどんなワクチン政策を決定し、実行しようとしているのか、まったく説明がありません。

漠然とした印象論としては、「欧米で接種が進んで、リアルな超大規模治験が進んだ後の方が、日本でのワクチン恐怖症蔓延を防げるので、ワザと遅らせた」。「日本発のワクチンがあまり早期に有望視されてしまうと、日本での大規模治験をせざるを得ないことで、アンチ治験との面倒なトラブルになるので、日本勢には積極的な後押しをしなかった」。「その一方で、あまり早期から欧米のワクチンの買い付けに走ると、欧米の製薬会社と癒着しているとかナントカといったイチャモンが来るので、こちらもスタートを遅らせるしかなった」というような印象もあります。

その一方で、「接種は医師、事前問診や経過観察は看護師、といった日本独自の超厳格な縛りを緩めることはできないので、どうせ接種体制は遅れる。ならば、早期に発注して、早期に来てしまうと大量の超低温冷蔵が必要だったり、それ以前の話として、ワクチン来たのにどうして打てないといった批判が来るので、手配を急がなかった」という可能性もあります。

こうした辛口の印象というのは、もしかしたら間違っているかもしれず、もっともっと基本的なところで、絶望的にできない理由があるのかもしれません。

仮にそうであるにしても、PCR検査についても、病床確保についても、そしてワクチンの確保についても、現状がベストとはとても言えません。様々な事情でこのような「次善の策」を選択しているのです。統治というのは、そこでウソをついたり、ダンマリを決め込むことではありません。有権者の、世論の納得するような説明を果たすこと、どんなに複雑でも「この判断に至った理由」を丁寧に率直に説明する、政府への信頼回復というのは、そこから始まると思います。

image by:StreetVJ / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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