米国流を取り違え。東芝の買収失敗で剥がれた「プロ経営者」のメッキ

 

「上から目線」という点では、藤森氏もひけをとらないようだ。YouTubeの映像やインタビュー記事からは、何かにつけてMBA取得、ジャック・ウェルチ流経営という、頭でっかちの金看板をひけらかす印象を受ける。

「20世紀最高の経営者」と評されるウェルチ氏の薫陶を受けたのは誇るべきことだ。保身のためのウソ、人の出世への妬み、無駄なだけのルール。そうしたものを会社から排除すべく奮闘し、「選択と集中」のスピード経営を実践したのがウェルチ氏だ。しかし、その経営姿勢は、躊躇なく従業員を解雇し、事業や会社を売り買いして会社を成長させた側面も併せ持つ。

それを間違って学ぶと、やたら社外に良いものを探し、社内にある良いものに気づかず、リストラとM&Aばかりに憂き身をやつす経営になりかねない。「プロ経営者」と呼ばれる人たちのなかに、そうした傾向が見られるのは気がかりだ。

会社は人間の生活をより良くするために人間がつくったものだ。株主価値の最大化だけが目的となった経営は、1万分の数秒で売買を繰り返す金融工学の奴隷であり、大金持ちにひれ伏すだけのものでしかない。

東芝買収の失敗により、藤森氏は多額の成功報酬をもらい損ねたといわれる。安全保障や原発にもかかわる会社だけに、藤森氏は経産省を納得させるため奔走したようだが、それも無駄骨に終わった。

もとはといえば、買収する側、される側に身を置いて利をはかる藤森氏の姿勢が問題なのである。強欲資本主義と決別すれば、新しいビジネスの視界が開けるのではないか。

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image by: yu_photo / Shutterstock.com

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